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ソー:ラブ&サンダーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.6
 サノスを倒し、地球の平和に貢献したはずのソー(クリス・ヘムズワース)の姿は、盟友であるガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と共に広大な宇宙の只中にある。神々の国アズガルドの王座をヴァルキュリー(テッサ・トンプソン)にあっさりと明け渡し、悠々自適な自分探しの旅を続ける若きヒーローはその自分探しの旅の途中で、全宇宙の神々滅亡を誓うゴア(クリスチャン・ベール)と出会うのだ。冒頭の暗黒舞踏のようなシリアスなテンションは、まさにクリスチャン・ベールの独壇場だ。他の場面では恐ろしくテンポの早いタイカ・ワイティティがこの場面に冗長なまでの時間を割いていることからも、今回のクリスチャン・ベールの起用が正に破格の扱いであると感じられる。DC側でヒース・レジャー扮するジョーカーと対峙したブルース・ウェイン/バットマンにはこのくらいの扱いが相応しい。然しながらこのゴアというキャラクターのビジュアルは単調で、クリスチャン・ベールをもってしても、あまり絵にならないのが残念だ。自分探しの旅の終着点にまさかの元カノ登場という願ったり叶ったりの展開も、おそらく賛否両論あるだろうが、両親も弟も失い、今もって失意のどん底にあるソーにとってはこれ以上ない展開で、もともと楽天的で陽のキャラクターのソーが、コメディのような軽快さを持っていることにも驚く。

 然しながら元カノがムジョルニアを手に取り、ソーと対になって敵を倒すというアイデアはやや強引に見えなくもない。そもそもステージ4のガン患者という設定も、アメコミ映画の最新作に相応しかったかどうかは再考の余地があるだろう。前半・中盤・後半と入れ子構造のようにサポート・メンバーの顔ぶれが変わり、最終的には手負いのメンバーで最強の敵と戦うというアイデアそのものが良かったのかどうかも評価は分かれる。ゴアと並び、今回初登場となるゼウス(ラッセル・クロウ)もコメディ・リリーフとしては絶妙な立ち位置ではあるもののやや消化不良で(ゼウスなのに2度もやられる始末)、エンドロールを見れば続編の登場人物の撒き餌として登場した感が強い。子供たちが人質に取られるなどややダークな雰囲気もフェイズ4の中では異色だし、武器の擬人化のアイデアもそう来たかと感心しきりだった。ゴアがヴィランとしてはビジュアル面でなかなか絵にならない代わりに中盤以降、タイカ・ワイティティは映像世界に明確な変化を付ける。色を失うモノクロ描写の圧倒的な美しさや、クライマックスのストームブレイカーの宇宙のような世界観は圧倒的だが、シナリオはこれまでのMCUと比べると明らかに一段落ちる格好で、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』〜『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』と続いたホームラン級の2本から再び、幾分後退した印象を受けた。
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