Jun潤

ソー:ラブ&サンダーのJun潤のネタバレレビュー・内容・結末

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

2022.07.09

2020年丸々MCUがお休みだったこともあり、今年に入って既に3作品公開されていると思うと、コロナ禍前の通例通りといえばそうなのですが、どうしてもニヤニヤが止まりませんね。
『エンドゲーム』を経て、ビッグ3の中で唯一命も力も失わず、宇宙へと旅立ったソー。
そしてMCU内で単独映画シリーズが前人未踏の4作目!
予告の段階で雰囲気として1,2作目好きのソーとジェーンの関わりが見たかった僕としては期待値マックスの今作。
なんとしてもIMAXシアターの席を確保しなければ。
(おそらく)この夏一番アツいバトルはココにある。

サノスとの戦い後、ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーと共に宇宙へと旅立ったソーは、ダイエットをして引き締まった肉体を取り戻し、宇宙の平和を守っていた。
次の救難信号をキャッチする中、かつての仲間・シフの危機を知ったソーはスター・ロード達と別れ、シフの元へ旅立つ。
ソーはそこで“ゴッド・ブッチャー”ゴアが神殺しを進めていることを知り、彼の次の狙いである地球の“ニュー・アスガルド”へ向かう。
新たなるアスガルドの王となったヴァルキリーと再会したソーは、そこで“マイティ・ソー”となった元恋人のジェーン・フォスターとも再会する。
驚きと喜びも束の間、ネクロ・ソードを持つゴアの呼び出した“シャドー・モンスター”の急襲により、アスガルドの子供達が攫われてしまう。
ヘイムダルの娘・アクセルとの交信により連れ去られた先が影の国であることを知ったソーらは、最強のチームを結成するため、全ての神々が集まる国へと向かう。
そこには堕落した全知全能の神・ゼウスを筆頭に様々な神がいたが、ゴアや彼に攫われたアスガルドの子供達のことなど歯牙にも掛けていなかった。
果たして、ソーと“マイティ・ソー”となったジェーンは、子供たちを取り戻し、ゴアの“神殺し”を阻止することができるのか!

うおお!!これぞMCU!!

まずは本作の主人公にして“アベンジャーズ”の一員としてもお馴染みのソー。
コーグのモノローグでも語られましたが、思い返してみればシリーズ通して色々なものを失ってきたものですねぇ…。
そんなソーが失った時が辛すぎるからと他人と距離を取ったり、最後に残ったヒーローとしての使命を全うし続けることを選択していたり、数少ない大事なもののために自身を奮い立たせたりする様から、これまでの積み重ねがあったからこそ彼の高潔な精神が如実に表れていました。
シリーズ序盤の、神としての使命や傲慢さ、弟との確執、武器への執着など、その猛々しい姿からするとあまりに矮小な心情を持っていたソーも、様々な喪失を経て、守るべき大切なものと出会い、不安定な中に強く剛健な一本の芯を見つけ保ち続ける姿が、あまりにも勇ましくハマっていました。
『ラグナロク』から続投のタイカ・ワイティティ監督節全開のコメディ描写も相まって、愛くるしさもマシマシでしたね。
あと新衣装ソーカッコよすぎね!?

そして『ダーク・ワールド』からまさに8年7ヶ月6日ぶりの登場となる、ナタリー・ポートマン演じるジェーン・フォスター。
ついに再登場かと喜びも束の間、まさかガンに体を侵されていたとは…。
しかしかつてのソーとの繋がりに導かれるように“ニュー・アスガルド”を訪れ、粉々になった“ムジョルニア”も彼女に呼応するように光を放つ。
その結果、“マイティ・ソー”となりがガンを克服したかと思いきや、むしろ力を使うほど逆にガンの進行を早めているだけだった。
ムジョルニアを持てば辛さは解消できるが戦う運命に翻弄され、持たなければ緩やかに死へと向かっていくのみ。
戦う恐怖に飲まれながらも、かつて愛した人と共に戦いへと身を投じ、自らを犠牲にしてでもゴアの野望を打ち砕こうとする。
この辺りはディズニー作品の最近の傾向でもあるポリコレ色が強く出つつも、ロマンスとコメディの真ん中を穿ついい塩梅でしたね。
『ダーク・ワールド』から『ラグナロク』の間にあったであろうソーとのやりとりを観れただけでも満足なのに、まさかここまで切ない終わりまで描いてくるとは…。
『ソー』シリーズにラブロマンスの雰囲気を求めていた僕としては、終盤の展開で涙腺が崩壊しましたし、これまでに無かったムジョルニアのショットガン殺法も観応えバツグンでしたね。

そして今作のヴィランである“ゴッド・ブッチャー”ゴア。
『ブラック・パンサー』のキル・モンガーを彷彿させるほど悲哀に満ちたキャラ造詣のようで、中盤の子供たちを嬲るような場面には不快感を感じさせながらも、その根底にある神の裏切りから来る不信感と復讐心には、共感とは言えないながらも、ヴィランとして一本芯の通った強さを感じました。
最終的にはエタニティに至り自分の目的を達したわけですが、ソーとジェーンの関係に感化された結果本当の願いを取り戻していて、魅力を底上げしていましたね。

今作単体として観ると、ソーの神を超えたヒーローとしての使命感や、失った時に強い寂しさを感じるほど大切だと思えるジェーンの存在と、ゴアの存在とのリンクもあって、ヒーローアクションものの範疇を超えすぎず、ドラマチックなテーマ性とメッセージを内包していました。
映像面でも、今作はIMAX3Dにて鑑賞でしたが、それを差し引いても宇宙の壮大さや神々の世界の神々しさが出ていましたし、影の世界の白黒映像も世界観やアクションの魅せ方の幅を広げていました。
そしてジェーンをもう1人の主人公に押し上げて、ヒロインは完全にムジョルニアとストームブレイカー。
神とハンマーと斧、そこに割り込むサンダーボルトの四角関係も今作の見どころの一つ。

『ソー』シリーズの4作目として観ても、ソーとジェーンだけでなく、ムジョルニア、ストームブレイカー、アスガルドと、非人間へのキャラ付けやこれまでの設定をそのまま活かす構成に加え、神々が集まる国に神殺しという、シリーズを通したら違和感のない設定にもすぐ腹落ちするし、『ソー』の世界観内で縦横無尽に物語を展開していた印象です。

そしてMCU作品群としては29作品目、フェーズ4の中では6作品目ですが、他ヒーローの出演が最低限だったこと、ゴアの出自が『ソー』の世界観内に収まっていたことから個人的にはフェーズ2に近い雰囲気を感じました。
しかし神々の国やエタニティ、ネクロ・ソードなど、若干エンドゲームの時何してたん?サノスこっち使えよ!と感じたり、今までに出てきたインフィニティストーンやカーン、マルチバースやセレスティアルズとの関連性など、今後への期待と不安半々に感じました。
セレスティアルズはエタニティ内の像に似てるものがあって繋がりもありそうですね。
そういう意味で言うと、これまでの積み重ねと今後への広がりから、∞のまさに真ん中部分な感じのする作品でした。

個人的には『ソー』1,2作目をワイティティライズした文句なしの傑作なので、なぜ賛否両論なのかよくわかっていませんが、シリーズの一つの集大成、今後の可能性の示唆と、MCU好きな人には是非観逃して欲しくない作品。
Jun潤

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