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ハロウィン KILLSのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ハロウィン KILLS(2021年製作の映画)
3.4
 ジョン・カーペンターの78年版『ハロウィン』の舞台に設定されたのはイリノイ州ハドンフィールドという架空の田舎町だった。住宅街に吹きすさぶ風は落ち葉を強く押し流し、今にも訪れる冬の気配に包まれた町には人の気配などなかった。高校から並んで家に帰る主人公のローリー・ストロード(ジェイミー・リー・カーティス)は、明らかに誰かに付け狙われている気配を感じていた。『ハロウィン KILLS』は前作『ハロウィン』同様に原典となる創造主ジョン・カーペンターの78年版『ハロウィン』への敬意を隠そうとしない。今作は78年版『ハロウィン』の正しい後日譚であり、2018年版『ハロウィン』直後のある一夜の物語を紡ぐ。取り壊されるはずだった殺人鬼マイケル・マイヤーズの生家は再建され、図らずもオリジナル版キャストの同窓会となる懐かしい面々が顔を揃え、信じられないことにリー・ブラケット保安官(チャールズ・サイファーズ)までもが当時の姿のまま登場する。

 40年間監獄に囚われ、外の世界を知らなかったマイケル・マイヤーズの侘しさもなかなか凄まじいが、今作は彼に思春期に受けたトラウマに町全体が縛られている。マイケルの生家の窓から外を眺めながら、フランク・ホーキンス保安官の相棒が呟いた「退屈な街」という言葉が頭から離れない。輝ける高校時代を謳歌した一方で、彼らはその後ニューヨークともロサンゼルスとも縁のない生活を送り、閉鎖的なこの街で仮初めの自由を謳歌して来た。かつて誰よりも彼氏が欲しかったローリー・ストロードは二度の結婚を繰り返し愛娘カレン・ネルソン(ジュディ・グリア)を設け、今は孫娘のアリソン・ネルソン(アンディ・マティチャック)にも囲まれている(前作では娘や孫娘に疑念の目で見られていたが)。マリオン・チェンバーズ(ナンシー・スティーヴンス)やリンジー・ウォレス(カイル・リチャーズ)、そして当時は赤子だったトミー・ドイル(アンソニー・マイケル・ホール)も同じような暮らしをして来たに違いない。

 トリロジー・シリーズの2作目となる今作は前作と打って変わり、マイケル・マイヤーズに花を持たせる格好となる。その証拠に瀕死の重傷を負ったローリーは病院の外には一歩も出ない。一方でヴィジランティズムを自認する町の人々は警察の力を借りることなく、ブギーマンの討伐に打って出るのだ。トランプ大統領時に吹き上がったホワイト・トラッシュの憎悪はいま、マイケル・マイヤーズへと向けられる。マスクを被った鬼畜を探す狂信的な姿は、ジョーカーに憧れた人々が暴動を起こした『ジョーカー』ともよく似ている。正にハドンフィールドの町自体が狂乱のうちにブギーマン症候群に陥っているのだ。ローリー・ストロードの姿を見つけることも出来ないまま、次々に殺戮を繰り広げるマイケル・マイヤーズの背中は怖いというよりはどこか寂しい。マイケルは40年前に殺そうとした人間をいま目の前で殺す自覚があったのだろうか?映画は78年版の正当後継作を自認する以上、2で明るみとなる兄妹の設定は破棄されるのだろう。ではなぜマイケルは執拗にローリー・ストロードをつけ狙うのか?全てはトリロジーのフィナーレとなる次作を待ちたい。
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