垂直落下式サミング

ハロウィン THE ENDの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ハロウィン THE END(2022年製作の映画)
2.3
「Michael Myers vs. the World.」
となるべきだった作品。僕のなかで傑作トリロジーになるはずだったのに、最後で大はずし。クッソ駄作。本当にガッカリした。
新ハロウィン三部作は、オープニングのカボチャがどうなるかで、なにを言おうとしてんのか、ある程度は内容を探ることができる。
一作目は、腐ったカボチャが逆再生で戻っていった。要するに死からの復活。あの夜がまたやって来ることを示唆している。
二作目では、複数のカボチャが燃えていた。ここでは、マイケル対ハドンフィールド住民という灼熱のバトルが展開される。今までは、蹂躙されるのみだったモブキャラたちが、怪物に立ち向かう勇気を得てがんばっていた。
そんで、三作目の今回はなにをみせてくれるのだろう。カボチャの中から、古いのを突き破って新しいカボチャがどんどん生まれてくる。これ、よくわかんなくね?怪物とは内から生まれ出でるってか?
「2019年ハロウィン」というエピローグで、いきなりガッカリ。新ハロウィンシリーズは、2018年の夜から一歩でも外へ出てはならなかったのだ。どんな犠牲を払ってでも、あの殺気だった夜のなかで、すべて決着させなければならなかった。
こっからずっと、大事なところぜんぶ的はずしちゃってんなって感じ。新ハロウィンの好きなところは、ホラー映画とはなん足るかに真正面から挑んで、答えを出そうとしていたところ。あまり高尚とは言えないジャンル映画の枠組みを使って、創作物の意義とはなにかを自問してみせるという思索。僕の好み、ど真ん中。
それが、上手くいっているか、製作上で意図されたものであるか、それはおいといて、創作と現実の関係を描いている作品が好きだ。
その軸で見ると、前回の『ハロウィンキルズ』っていうのは、なかなかにスゴい作品だった。第二作目に関しては偏愛的なところもあって、ホラー論を自問して見せるような入れ子構造が面白いから、ホラー・スプラッターの表現に甘さのあるところは、結構目をつぶってた。よくよく考えると、群衆がひとりの男をよってたかって追い回すところは、チンタラ長くてシャバかった気がする。
前作では、町の人々にフォーカスして、力のないモブキャラたちが悪に立ち向かう決意をした。それでも勝てなかった。そういう結末だった。だからこそ、完結編で正義にも悪にも落とし前をつけるべきだった。
「ファイナルガールの心の救済」は、最初にやったんだから、もういいよ。またババアの復讐と因縁のはなしに戻るから、おはなしが安っぽくなる。
本作がテーマとしているのは、「悪とはなにか?」ってことなんだろうけど、それを語り直すにあたって、前作でしめした「町 vs怪物」という構図を、もう一度個人の問題へと落として矮小化したのが気に食わないし、マイケルに共感するのがぽっと出の若造なのが最悪。
だいたい「悪や殺意は伝播するし普通の人々の心のなかにもある」って話にするならば、この青年だけがマイケルに共感していくのは都合よすぎないか?途中に出てくる不良だって、好き勝手なことを言うDJだって、こいつらも殺意に目覚めるべきだろ。マイケルを象徴化するにしてはチョロいものにしすぎだ。
それでも一応、肝心のホラー演出が冴えてりゃいいんだけども、それも手抜きじゃんさ、こんなもん。なにこれ、有名シリーズの最新版にあるまじき酷さだと思うんすけど。
一作目のワンカットなが回しで住宅に侵入していくところとか、二作目だと暴徒と化したハドンフィールドの住民たちを大虐殺していくところとか、これまでは殺しの撮りかたに工夫や知恵があったはずだ。
今回は、後ろから来てただ刺し殺すだけみたいな芸のなさ。ホントにガチで引き出し少ない。三部作続いてきて、どうしちゃったの?俳優もスタッフも疲れちゃったのかな?この手の映画のなかでも、過去イチ薄目時間短かったべ。
怖くない。面白くない。つまらない。工夫もない。そんでもって、主題に対しても誠実じゃない。ナイナイずくしで、本当にガッカリでした。