えちぜん

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのえちぜんのレビュー・感想・評価

4.3
最近のマーベルはどれも焼き増しのようで少食気味だったが、アベンジャーズ完結以降では最も良作だった。

チャドウィック・ボーズマンの訃報後、『ブラックパンサー続編』のニュースを聞いたとき、ワタスはマーベルとディズニーに商業主義の臭いを感じ、少し嫌悪を抱いた。1作目がヒットしたから、主演を変えてでも続編を出したいのかと。

しかし本作は冒頭から、チャドウィック=ティ・チャラが亡き後の世界を真っ正面から提示してきた。ワタスは先入観で、「S Wのレイアのように、チャドウィックをCGで登場させるのか」「それとも生き返る展開なのか」とでも思っていたのだが、そのような仕掛けは全くなく、亡くなった者は亡くなった者として受け入れ、その上で残された者たちで新しいものを作ってゆくという作品であった。

言わずもがな、それは決して「故人を忘れる」の意味ではない。別れ、失い、それでも人は前向きに進んでいくという意志である。

それは本作『ワカンダ・フォーエバー』で描かれるテーマそのものであり、つまり映画の内容と、キャストや製作陣が本作を作り上げる心意気というものが、完全にシンクロしているという点で、この製作とは奇跡的なことなのではないか?とさえ感じた。いや、作家性の強い小規模作品ならありえるかもしれないが、ハリウッドの超大作、それも商業娯楽の映画でそういうことができるのかと。鑑賞していて、スクリーンの奥底から俳優や製作者の熱いマインドのような気迫を感じたのだが、これは気のせいなのだろうか?

仰々しく書いてしまったけど、前作同様に小道具から衣裳まですごくオシャレだし、エンタメ大作としても面白い。現状、圧倒的な『すずめの戸締まり』旋風で陰に隠れがちになっているけどw(そっちも観に行くけど)、奇跡的な一本として高く評価したいです。

余談として1作目のことで不満だったのは、レンタルDVDのパッケージがほぼブラックパンサーのイラストのみで、俳優たちの写真がほぼ使われないレイアウトだったからです。そういうとこが文頭のマーベルとディズニーに対する先入観に至った訳です(`_´)ゞ
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