しゅんまつもと

ハスラーズのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ハスラーズ(2019年製作の映画)
3.7
振り返ること、というのは人間の最も誇れるべきところであると思っている。自分のこれまでを振り返り、反省したり後悔したり、もう手の届かないものに想いを馳せたりすることほど人間くさいことはない。文字通りそんな映画だと思った。

コンゲームとしての魅力である、相手を嵌めたあとの、ざまーみろ感は恐らく意図的に薄めているように感じた。本当に悪い人は、なんて言い出したらキリがないのだから。この映画の魅力はきっとそこではなくて(もちろんそういう意味でも面白いのだけど)、自分の足で立ち自分での手で進むべき道を選ぶこととか、傷つきもがく彼女たちが一瞬でもたしかに繋がったクリスマスのあの日とか、そういうところだろう。偽物だろうとその輝きが本物であれば確かにそこには価値があるはず。

しかし、聞き手として配置された記者・エリザベスの立ち位置の批評性が少し欠けているような気がしてならなかった。語り手がデスティニーしかいないのであれば、その不安定さがもっとあるべきだし、聞き手はもっと冷静でフラットでいるべきなのでは?ラストはたしかにグッとくるのだけど自分にはちょっとウェットすぎた。