りっく

ハスラーズのりっくのレビュー・感想・評価

ハスラーズ(2019年製作の映画)
3.7
本作はリーマンショック以前と以降という21世紀のアメリカの経済を、ストリップショーの世界から切り取った社会派映画だ。そのような意味では、アプローチは「ブギーナイツ」に近しいものがある。だが、本作は群像劇ではなく、この世界に飛び込んだアジア人女性と、彼女とコンビを組み成功に導く姐御とのバディムービーとして語られていく。

まず、もう姐御という言葉以外、形容ができないジェニファーロペスの圧倒的存在感が素晴らしい。完全に現役を退いたオーナー的立場ではなく、あくまでも現役ストリッパーとしてのパフォーマンス勝ることながら、弱き若者に手を差し伸べる包容力も持ち合わせる盤石さ。観客は主人公と同様に彼女の魅力にひたすら引っ張られていく。

ウォール街で金儲けをする奴らを如何にコントロールし、汚れた金を店に落とさせるか。性欲のはけ口として来店する金持ちの強欲さを逆手に、パワーバランスを逆転させる術を伝授する序盤はカタルシスと多幸感たっぷりに進んでいく。

一方で後半は、行き過ぎたパワーバランスと、自らも強欲の渦に飲み込まれ、犯罪に手を染めていく様を描いていくが、徐々にテンポが悪くなっていくのが残念。インタビュー形式で過去を回想する語り口になっているため、ノスタルジックな感動をラストに残しているものの、そこに至るまでのクライムサスペンス的な緊張感がもっと盛り込まれていればエンターテインメントとしてより面白いものになったはず。
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