答え合わせをせず、観客それぞれの考え方と結論に委ねる構造がすばらしい。結論の導き方によっては、否応なしに差別的な見解になるように作られてある。
この作品と観客の関係性こそが、本来の差別問題の本質に近いのではないかと考える。我々の想像よりも遥かに複雑で、様々なケースが折り重なって生まれていることに留意しなければいけない。
演出としては、小道具の使い方や二転三転するドラマの大きな振れ幅がうまく機能し、サスペンス、スリラーとしても上質。
オバマ的、ウィル・スミス的なエリート黒人の枠に入れられて、あたかも人種なんて存在しないかのように振る舞われる。そんな見当違いな薄気味悪さを通底して肌で感じられることも他と一線を画している。