これは伝記。四角い画面で縁取られた猫の出てくる可愛らしい物語のように見えて、ルイス・ウェインという人物のあまりに短い幸せと、あまりにも喪うものが多かった人生、そのものが映し出されている。
フィクションがどのくらい入っているかは分からないけど。
彼の心休まる、温かく幸せな時間がもっと長かったらその先ももっと違っていたかもしれないし、
あるいは妹たちが結婚していたらまた違っていたかもしれないし、、、
彼の人生はプレッシャーも多くて、支えは少なかったんじゃないかなあ、って思うとifを想像せずにはいられなかった。
ストーリーとしても、前半は階級制度の嫌なところとか、悲しい運命に切なくなりつつ、とても入り込んで観ていたんだけど、後半はもっともっと苦しくて、芸術家の一面といったらそうなんだけど、雰囲気が結構変わって辛かったな。
そんな中でも救いだったのは、愛くるしい猫たち。なんと彼らは途中で話したりもしていた。わたしは犬派だと少し前に思い至ったけれど、眼鏡をかけたりリボンを付けたりした猫たち、とりわけピーターには思わずきゅんとしてしまった。
猫の捉え方が数十年前には今とは違ったのだと知って、エミリーが予期した通り、猫と人が今のような生活を送れているのは、確かにウェイン夫婦のおかげなのかもと思った。
ああでも、イギリスの風景って何度でも綺麗だなって思う(いつか肌であの空気を感じたい、、、!)けど、絵画みたいに美しかった、ウェイン夫婦が見たあの光景が、最後に彼の心に訪れて、良かったなあ。
メイクからなにから、カンバーバッチがやっぱりとてもすごかったけど、
クレジットにオリヴィア・コールマンの名前を見つけて、え?どこで?と思ったらナレーションだった。贅沢過ぎる。