ウシュアイア

hisのウシュアイアのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
3.5
FOD配信の話題作ということで、見てみた。

映画を見るときには登場人物の行動や感情の普遍性、次に登場人物への共感性を重視するのだが、共感しづらい同性のラブロマンスは閉じた世界での二人だけの話になりがちで、視点の置き場に困ってしまう。その点、この作品は当事者以外にもいろいろな立場から見ることが可能。

玲奈の視点は、子どもを設けた配偶者が実は同性愛者だったら、と拡張することもできるし、配偶者と男女の関係でいられなくなったら、というところまで拡張できる。

そうして考えてみると、渚は玲奈と男女の仲ではあったし、渚と玲奈の離婚話も、渚が過去の恋人が忘れられない、といって玲奈に別れを切り出しただけだの話である。

もっと言うと、相手が男だろうと女だろうと大きな意味はなかったはずだが、自分はゲイだ、と渚が言いきってしまったことで、玲奈への愛情はウソだったということにしてしまったから玲奈は傷ついたんだろう。余計な告白だし、これも同性愛であろうとなかろうと、自分の気持ちにウソをついて結婚しました、なんて言われたら傷つく。それに夫婦の愛情には恋愛の延長以外にもいろいろな形があると思う。

さらに、娘・空ちゃんの養育権問題も、玲奈側の弁護士は夫側が同性パートナー云々の話を持ち出してきたが、最終的には玲奈と渚それぞれの育児能力が争点になり、子どもにとって何が幸せか、というところに着地する。

この映画は同性カップルの話のようだが、夫がかつての恋人への想いが再燃してしまった一組の夫婦のありふれた離婚話だった、という見方もできる。

夫のかつての恋人が男だったがために、社会における同性カップルのあり方や差別や偏見といった社会派テイストが出てきた感じがある。
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