大道幸之丞

hisの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

his(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

恋愛作品が得意の今泉力哉監督が手掛ける同性愛者間の人間模様。

ゲイの世界も深い。「ゲイカップルあるある」なんて冗談のカテゴリがあるほど。
本作では学生時代に付き合い同居までしていた2人は「プロサーファー」になると告げて1人オーストラリアに行ってしまった渚。とりのこされた迅。自然消滅の形で2人は離別してしまう。

自分の生きる道をもとめ東京から離れ、岐阜の過疎地で静かに暮らしていた迅の元へ13年ぶりに突然渚が現れる。しかも娘の空を連れて——

なんならこの2人の関係を男女に置き換えても成立しないでもない。しかしなにかと保守的な思考の多い僻村でのカミングアウトは東京よりも難しい。東京でも苦労してきたのに。

純然たる愛の姿をあるがままに先入観なしに受け容れた空のひと言が迅の背を押し、村人の前でカミングアウトする。

見どころは「暮らし」レベルではなんとかなりそうな2人の関係も離婚調停の親権争いでは「法のものさし」を入れられてしまうと誰かが徹底的に傷つくし、愛そのものは何も解決の助けにならない現実を突きつけられる場面だろう。

これまで映画作品での同性愛は必ず最後に悲劇的な結末が多かったのだが、本作品では未来も見え、例え問題が立ちはだかっても、しかしそれはきっとこの2人なら乗り越えていくであろう余韻がある。

それにしても今泉監督は相変わらずキャスティングでほぼ勝負が決まっているのはさすがだなと感服