松井の天井直撃ホームラン

hisの松井の天井直撃ホームランのネタバレレビュー・内容・結末

his(2020年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

☆☆☆★★★(ちょい甘)

映画の前半で、彼がフライパンを使った場面で「もしや?」と思った。

映画の中盤で、もう1人の彼が同じ事をした時に「やっぱりそうなんじゃないか?」と、やはり思った。

映画の後半で裁判場面となり。このままでは、幼い娘が証言に立たなけれならない…可能性が出るに至り彼は決断する。

映画のラスト直前に、ある人物がフライパンを使い…。

ここに至り私は確信した。この作品は、今泉版による、新時代の『クレイマー、クレイマー』である…と。


『愛がなんだ』以降の今泉監督の勢いが止まらない。
どの作品でも、会話の面白さ。登場人物達の拗らせ感や、周囲の人を巻き込みながらストーリーが展開して行く世界観に魅了されて来ました。
そんな今泉ワールドを期待してスクリーンを眺め始めたところ。アレっ?何だかこれまでとはかなり違う…と、戸惑う事しきり。
最近の数作品に共通していた、登場人物達が話す会話の妙に引きずられる様に躍動していたと思える映画のリズム感が、いつまで経っても生まれずにいた気がする。
その様に、前半から中盤にかけては。なかなか映画の世界に没頭出来ずにいたのが、正直なところでした。
BL男子のちょっとだけ拗れた関係も、これまで今泉監督が描いて来た男女の恋愛模様とは少し違っている為に、ほんの少しの違和感を感じてしまったのも事実。映画本編自体もゆったりとした動きで。この辺りは、まだまだ同性愛に対する偏見とはしっかりと向き合えない2人の感情を反映させてはいた…とは言えるのでしょうが。

それだけに。カミングアウト後から後半に描かれる裁判劇以降は、やっと映画自体が走り始めた感を感じられ、段々と面白くなって来ました。
偏見と戦う…と言った側面と同時に、どこか《勧善懲悪》劇的な要素も重なった結果かもしれませんけど…。

初めに〝新時代の『クレイマー、クレイマー』〟と記しましたが。映画のラストは、観客に判断を委ねる終わり方になっていました。その辺りは、本家が描いていた。現実を直視させるかの様な!突き放すリアルな感覚とは異なり。映画としての説得力の弱さを感じてしまった…と言うところではありました。

2020年1月28日 TOHOシネマズ日本橋/スクリーン3