熱烈なファン

シン・ウルトラマンの熱烈なファンのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

シン・ゴジラに感動して、シン・エヴァンゲリオンに一通り納得して、さあシン・ウルトラマンは?
と期待してスクリーンに向かったが、そんなに続けて好感触は得られないものだなと残念な気持ちになった。

この作品は「昔観た、あるいは話に聞くウルトラマンを、大人になった今観たい・知識として知っておきたい人向けの作品」だと感じた。
※制作側の意図としても幅広い人に伝えるウルトラマン映画という側面があったので成功していると言える。

世間的にはウルトラマンを改めて知るいい作品になったと思うが、どうにも自分の肌には合わなかった。

先に不満点
1.シナリオ
提起したい現代の社会問題(エネルギー、外交)に対してウルトラマン39話の中から数話丁度良さそうな話をピックアップして、オリジナルの解釈を付け加えた。という点に作りの安易さを感じたこと。

2.ウルトラマン
ウルトラマンが母星から罪を問われる立場になってもなお人類を滅亡から守ろうとする終盤の流れ。
「そんなに人間が好きになったのか」に繋がる良いシーンであり、人類にとっては嬉しい限りだが、やっていることと考え自体は過去作「ウルトラセブン(OVA)」の焼き直し感が強い。
また、成田亨デザインをリスペクトしたデザインは良いがピンチになると体色が変わるのでは結局カラータイマーとやっていることが同じではないかとなってしまった。
まぁカラータイマーがあるよりマシだということだろうが。
個人的にウルトラマンの「声」が無いのが辛かった。

3.ラストシーン
ゾーフィが神永とウルトラマンを分離して目覚めて「おかえり」で終わりってテキトーすぎでは?
神永は序盤早々に子供を助けた際に命を落として、融合後意識はずっとウルトラマン側になっている。
分離後のラストに浅見に「お帰り」って言われたって「誰お前?」ってなるのでは。
あれだけ宇宙の秩序に厳格そうなゾーフィがまさか実は分離させずに蘇らせました、とかはないだろうし。

4.長澤まさみの各種カット
巨大フジ隊員オマージュシーンのアオリや尻を叩いて気合を入れるシーンなど、制作側は面白さを狙って入れているのだろうし、会場では笑い声も聞こえたが、あって困るものではないが、このシーンに尺を取る必要性が果たしてあるだろうかという疑問が先に来てしまった。

5.禍特対
劇中で禍特対が禍威獣に対して何か出来たという実績は冒頭以外にはほとんどない。
彼らが何者なのか、その役割は何か、今ひとつ必要性がわからなかった。(しかしその中で滝は明確に役割を持っているので良い見せ場があった。)
巨災対のように設立までの流れや関係者がもっと出て来ていれば違ったかもしれない。
現代社会をベースにしている割に、禍特対は人数が少なすぎる。


良かった点
1.メフィラス星人戦の空撮
あえて狙ったと思う特撮の空気感が出ているような気がした。

2.ザラブ星人の造形
身体すっごいペラペラ。宇宙人だし既存の着ぐるみ特撮ではできない新しいアプローチで面白い。

3.山本耕史、竹野内豊の演技が良い。
単にスターシステムだと思うが、シン・ゴジラから竹野内豊が継続して出てきたことで何らかの世界観の関連性を感じてしまう。
ワンチャン、シン・仮面ライダーでも出てきて欲しい。
山本メフィラスは人間世界に良く溶け込んでいる。
「私の好きな言葉です」は人類への理解度として今までのメフィラス星人を超えているなと、脚本に感心した。


なんだかあと1時間、いや30分でも映画の内容に説明があればもう少し納得感が得られたのではと思わずにはいられなかった。
下手にTVシリーズ等の過去作品を知っていると余計な考えがジャマして楽しめなくなる難しい作品だった。

良い点もあるので悪くない作品だとは感じるのだが、正直あの(ウルトラオタクで自主製作もしてしまう)庵野が手掛けたウルトラマンがこんな作品なのか?と疑問に思わずにはいられない作品だった。
監督は樋口の方なので、もしかしたら樋口イズム(あるいは製作委員会の意向)が強く、庵野はそれにOKしただけなのかもしれないが、だとしたら案外そんな程度の扱いしかしてないのか?としか。

過去作の映像的なオマージュは本当に山盛りだったのでその気になって探せばもっと見つかるだろう。
再度観る機会があれば探すのもいいかなと思っている。
熱烈なファン

熱烈なファン