このレビューはネタバレを含みます
ウルトラマンってかっこよくて美しい！ということをずっと教えてくれる映画。
この映画の最も特徴的なところは、人間を愛してくれる生き物が世界中でウルトラマン一人しかいないという状況を作り上げているところだと思う。
全体の流れは初代ウルトラマンをなぞっているけれど、初代の最終回とシンウルの結末にはところどころ大きな違いがある。
初代ウルトラマンではウルトラマンは死なない。同じ惑星からヘルプに来たゾフィーさんがたまたま命をふたつ持っていたので、その命を分けてもらうことで、ウルトラマンもハヤタ隊員も無事に生き残ったまま離別する、という流れになっている。めちゃご都合主義な展開である。しかしこのおかげで、心優しいウルトラマンのような存在が宇宙の他の惑星にもいる、という状況が生まれ、次回作にも繋がっているのかな〜と思う。
シンウルトラマンでは、ゾーフィが命をわけてくれることはなく、ウルトラマンは神永のために死んでしまう。
ゾーフィはあくまで星の掟に従順で、最後には優しさを見せてくれるが、ウルトラマンほど人間のことを想っては行動しない。
ウルトラマンのように優しい生き物は、87星雲にもいないという状況になる。
宇宙人の描き方も面白い。
文明駆逐マシーンであるザラブさんはともかく、地球や人の文明を愛しているメフィラスは、ひょっとするとゾーフィよりもウルトラマンに近い存在かもしれない。もちろん、人類を利用とするのは愛じゃなくない？とは思うけれど。
怪獣→宇宙人→人が好きな宇宙人→ウルトラマンと同じ惑星から来た宇宙人
という流れで、少しずつウルトラマンに近い者たちが登場する構成になっているが、一貫してウルトラマンと他の者たちが手と手を取り合うことはない。
ウルトラマンが手を差し伸べたのは人間だけで、人間に手を差し伸べてくれるのはウルトラマンだけなのだ。
でも人類はあんまりウルトラマンを唯一だと思っていないかもしれない。
ザラブにもメフィラスにもホイホイとついていってしまうし、ゼットンって明らかにデカすぎるのに、簡単にウルトラマンに頼りはじめる。他の敵とウルトラマンの区別がついていない。
SSSPのみんなには、ウルトラマンと共に戦ううちに彼に対して仲間意識が芽生えている。ウルトラマンがゼットンと戦う前に、班長は「君を犠牲にはできない」と声を掛けていることからもわかる。でも、それはSSSPの隊員である神永に対して掛けられている言葉かもしれない。ウルトラマンは神永であるから、ウルトラマンだけに言葉を掛ける人間は、神永を知るSSSPにはいないのかも。
それも含めて、人間とウルトラマンの間に生まれる友情は、あまり対等なものではないと思う。
でも、浅見はウルトラマンになる前の神永を知らない。
だから、浅見はウルトラマンをウルトラマンとして真っ直ぐに向き合うことができる唯一の人間なのかもしれない。浅見と神永のロマンスが色々ダサすぎることは置いといて(臭い嗅がれてドキドキ💖って何？真面目にやれ)浅見がウルトラマンに対する親愛と、神永に対する親愛を統合した結果、愛になったことは嬉しい。ゼットンを倒しに行く神永に浅見がキスをするシーンはカットされたらしいけど、カットしなくても良かったんじゃないかなと思う。別にロマンスではなくてもいいけど、あの時の「いってらっしゃい」は、後述するラストシーンの「おかえり」の意味合いを変えるから、もう少し深い描写でも良いと思う…。
ウルトラマンは死ぬ。神永のために命を与えて、人類のために死体を残す。
マジで「愛の戦士」だな。ウルトラマンって本当にかっこいい。
ウルトラマンは本当にかっこいいけどこんな優しい人にはマジで死んでほしくない。えーん😭という気持ちで映画を観ていると、神永視点に切り替わる。
秀俊から順に「神永」と名前を呼ぶシーン、マジでありえん。浅見がめっちゃ泣いている。浅見、泣いている…。
でも浅見はそれから笑って、「おかえりなさい」と言う。おかえりなさいって、誰に対して？
「いってらっしゃい」と声を掛けたのはウルトラマンで、神永だけど神永じゃない。
何か奇跡が起きて、神永はウルトラマンのまま帰ることができたのかもしれない。または、浅見はまだウルトラマンの死を理解できていないのかもしれない。でも、もしも、海にウルトラマンの死体が浮いてたりしたら、どうしよう。
ウルトラマンが死んだことを理解して、それでも神永に「おかえりなさい」と声を掛ける浅見は、何を見ているんだろう。
浅見が愛したのはウルトラマンであり神永なので、どちらか片方じゃだめなはずなのに、浅見は…浅見は……なんで……
なんか収拾がつかなくなってしまいましたが、私がシンウルトラマンで人と語り合うならこの点について話したいなという部分を書きました。神永のキャラクターが不明なところとかについても話したいので、もう少し整理してから加筆すると思います。
私は世界でたったひとつの愛が好きなので、この映画が大好きです。愛してます、シン・ウルトラマンのことを…。
