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1917 命をかけた伝令のfilmgramのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.7
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【劇場鑑賞/6本目(2020.02.14)】
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【作品情報】
邦題:「#1917命をかけた伝令」(19.12.25)
原題:「#1917」(20.01.20)
製作:アメリカ、イギリス/上映時間:110分
配給:🇯🇵東方東和、🇺🇸Universal Pictures
支持:評論家89%、オーディエンス88%
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【キャスト・スタッフ】
■監督#サムメンデス
⇨007シリーズ、アメリカンビューティー
■主演
●ウィリアムスコフィールド/#ジョージマッケイ
→はじまりへの旅、マローボーン家の掟
●トム・ブレイク/#ディーンチャールズチャップマン
→ゲームオブスローンズ
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【あらすじ】
第1次世界大戦が始まってから、約3年が経過した
1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が
西部戦線で対峙する中、イギリス軍兵士の
スコフィールドとブレイクにドイツ軍を追撃している
マッケンジー大佐の部隊に作戦の中止を知らせる
命令が下される。部隊の行く先には要塞化された
ドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた-
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【鑑賞前に知っておきたい予備知識】
①本作の背景
監督のサムメンデスの祖父が上等兵として従軍した
WWⅠでの体験を基につくられた作品です。実話となる
脚本はありませんが、参考にしたであろう事実は存在。
それは、1917年3月にドイツ軍がヒンデンブルク線に
撤退した出来事です。この撤退は戦略的撤退で、英仏の
戦略を上回っていたこともあり本作と重なります。尚、
史実に1600人のために走った伝令の記録はありません。
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②本作は「全編ワンカット」ではない
各シーンをワンカットで撮影し、作品全体が
継ぎ目なく繋がるよう編集することでまるで
1つの長回しのように見える手法。よって、
one shotではなくone continuous shotと
言える。全編ワンシーンワンカット撮影の
きっかけは、同監督の"007/スペクター"の
冒頭シーンからです。エキストラ1,500人に
メイクを施して行われたメキシコシティの
"死者の日"は、約5分間のワンカット長回しで
撮影されました。その際監督は、"映画全編を
こんな風にできるだろうか?"と考えたそう。
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③トムホランドと主演の交渉?
2018年夏頃、主演のトムブレイク役に
トムホランドが出演交渉をしていました。FFHの撮影等で忙しくて実現とはならず…
スパイダーマンの影響もあって 米国俳優のイメージが強いトムホですが、実は彼も
英国紳士の一人なんですよね。
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 【感想/ネタバレ含む】
バレンタインデーに戦争映画を観てきました!笑
冒頭のコリンファースから中盤のマークといい
とにかく終始豪華英国紳士まみれで大興奮しました。
軍服にかっこよさを感じるのは中二病でしょうか?笑
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ワンシーンワンカット故にどうしても物語の内容は
普通の映画と比較すると薄くなってしまいますが
舞台演出家出身である監督の発想によって、舞台と
融合した新たな映像表現が誕生したと思います。
もはやワンシーンワンカットで撮らなくとも、
高評価だったのではと思うクオリティでした。
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●ワンシーンワンカットの良さ
究極の没入感と臨場感を生む全編ワンカット映画の
魅力は、”映画内”と”観客”に流れる時間が一致する点。
一方で舞台演出的な要素が強まり、物語の完成度は
落ちてしまいがちです。これは、人物よりも撮影方法を
主体で考える必要があるからです。
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最も困難な点は、映像の緩急をつけることです。
時間の流れと人間の行動に制約がある映像では単調で
観客は飽きが生じてきます。だからこそ本作は
”ワンカット風”を採用。制約のある中、カメラワークを
普通の映画のように変幻自在にアングルを操り
自然に時間軸を変えることで緩急を付けたのです。
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●演劇と映画の融合
中盤、スコフィールドが意識を失って昼から夜へと
転じるシーンは、舞台演劇のインターミッションを
意識しているかと。舞台もワンカット撮影と同じく
始まると物語は止めれませんが、唯一休憩時間の時に
物語を中断できるのです。これにより昼と夜の2つの
時間軸を描けるようになり、多様性が生まれました。
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夜のエクーストを彼が失踪するシーンの映像は美しく、
照明弾や業火に浮かぶ敵兵のシルエットなど、単純に
映像表現として息を飲む場面が多かったです。舞台
演出家出身の監督だからこそ成し得た映像作品です。
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●戦争=個の集合体
本作「1917」は、壮大なテーマでありながら実は一人の
青年にスポットを当てた小さな物語。故郷から離れた
場所の戦場では、家族や故郷を思わずにはいられません。
そうした一人一人の小さな思いの集合体が戦争なのです。
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序盤でブレイクはドイツ兵士に刺されて息絶えますが
直後に乗ったトラックでは、ブレイクのように戦場で
冗談を言って場を盛り上げる青年がいました。直後に
彼に似たような他の部隊の人物が描かれるのは、主人公
2人は特別な存在ではなく、戦争に内包された集合体の
1つに過ぎないことを仄めかしている気がしました。
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●家族のもとへ
“ソンムの戦い”というWWⅠで最も過酷と言われた
戦いを経験しているスコフィールドは、ブレイクの
家族を助けたいという想いから危険を顧みない行動を
咎めていました。また、彼は洞窟から脱出してすぐに
写真を取り出し、無事を確認すると缶ケースに入れて
保護します。これはラストで彼の妻と娘のものと判明。
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エクーストの街では女性と乳児に安心感と安らぎを
感じ、使命を一時的に忘れているようにも見えました。
“家族”とは、再会するという生命力になる一方で
”戦争”では冷静さを失う諸刃の剣のように感じました。
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紆余曲折を経て使命を成し遂げたスコフィールドは、
ブレイクの形見を彼の兄に託すことで、命の恩人を
”家族”のもとへ帰します。そしてラストシーンで1人
木にもたれかかり、”家族”の写真を見つめる彼は初めて
”戦争”から離れて”家族”を想える時間を迎えるのです。
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