深獣九

メタモルフォーゼ/変身の深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

メタモルフォーゼ/変身(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

じっとり怖い映画かと思っていたが、韓国版『エクソシスト』だった。
思い出すのは『哭声』。これも悪魔の話だった。調べてみると韓国はキリスト教信者が多いようだ。だから悪魔の恐怖を描く作品も多いのかな。興味深い。

この手の映画は、国の東西問わず何度も観てるはずなのだが、やはり悪魔の汚いやり口には慣れない。人心を惑わし、疑心暗鬼にさせて内部から崩壊させる。本当に恐ろしい。
悪魔は、少し問題を抱えた家族に取り憑く。ちょっとした隙間を見つけて潜り込む。姑息なヤロウだ。
本作では家族の誰かに化けて、奇妙な行動を取る。急に暴力を振いだす父、狂乱する母、呪いの言葉を吐く妹、寝ている叔父の首元に包丁を突きつける弟。心身ともに傷つけられた家族は互いを疑い出し、崩壊してゆく。そのやり口に虫酸が走る。もし自分が当事者となったらと思うと……震える。
『遊星からの物体X』を少し思い出す。あれも悪魔だったのかもしれない。

悪魔に憑かれると皮膚が爛れぼこぼこと隆起し、吐血を繰り返す。なかなかによくできた描写だ。親の気持ちになれば、娘のそんな姿は耐えられない。思わず祈祷の邪魔をしてしまう。狡猾な悪魔の心理攻撃は容赦ない。

感想文の冒頭によくある話と書いたが、取り憑くではなく親しい者に化ける悪魔というのは、もしかしたら新しいかもしれない。そういう意味では観る価値はあろう。もちろん脚本はよくできてるし、演者の芝居もうまい。家族が豹変するあたりも、心の底からゾッとする。
多くはないがゴアっぽい描写のクオリティも悪くない。ガラス片が足を貫くシーンなんてもう……『X』でも似た描写があったが本当にイヤ。私の嫌いなシーンです💦

ラストはまあ収まりがいいかなというところだが、家族がこの痛手を乗り越えて生きてゆかねばならないのは、めちゃめちゃ気になる。乗り越えられるのか? 物語は終わってない。ハッピーエンドにしないところがとてもいい。

それにしても韓国映画のクオリティの高さよ。はずれに巡り合ったことがない。そこまでたくさん観ているわけではないが、韓国産というだけで期待値は高まる。台湾、香港、タイなど、このところアジア勢がとても頑張ってる。これからも楽しみにする。

追記
冒頭のシーンから良かった。窓枠を落として、落ちたらどうなるかを暗示させるシーン。結果は見事にナランチャ。好きでした。
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