ルカマリネッリがありえないくらい格好良すぎる上に演技も最高で眼福。フィルムで撮られた画の芸術的な質感も美しい。
家族や恋人から物語が重たく生々しすぎると評され、明るく軽い話を望まれる。しかしハッピーエンドは生活の麻薬でしかなく、書きたい、生きたいという本望の渇きを感じることのない人の意見である。
汚さ、飢餓、政府や上流階級に扱き下ろされる貧乏人の現実を知らない貴族にあなたは夢を見ている、堅実に金を稼ぐよう物事を考えろと現実的なことを言われる。
一般教養をも超え、人生を豊かにする、美を感じる、政治を語るため、生涯の学びとしての教養を身につけ、全身全霊で愛し論じ合い向き合いたい、言葉を綴りたいと強く願う心。孤独な飢えを創作によって昇華し愛する者と添い遂げたいという上昇志向。
生き急ぎ朽ちて沈みかけてしまった船。書く意味を失ってしまい、航路も見出せず舵も取れない。遠くから見ると美しかったそれは、まるで最初に見ただまし絵のように滑稽で暴力的で。
放浪により海に身を任せる中で、魂が望む一筋の光へと全てを投じる。荒波に揉まれながらその先へと泳ぎ、身一つで航海を止めずに進む姿は不思議と破滅ではなく前向きに捉えられる。
小説がすごく面白かったんだけど、映画もノスタルジックで良かった。