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異端の鳥のBluegeneのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.8
COVID-19 拡大中につき都心の映画館は敬遠しがちで見逃していたのだが、近所のミニシアターで上映されたのでやっと見ることができた。

正直、長尺だし知らない言語だし、寝てしまうんでは?と密かに恐れていたんだけど、全くそういうことはなく。そもそもセリフが少ないから言語あんまり関係なかった。モノクロの映像の緊張感がすごくて寝るとかありえませんでした。

主人公の少年はホロコーストから逃れるために田舎に疎開するのだが、預けられた家のおばさんが突然死。誤って落としたランプで家も丸焼けになってしまい、少年は放浪の身に…少年が行く先々で会う人々とのエピソードを重ねた、いわゆるロードムービーの形式なんだが、この人々が残酷だったり無慈悲だったり、親切なのかと思えば実は下心があったりと、一筋縄では行かない映画なのだ。

中世で時間が止まったような農村の人たちが見せる人間の根源的な残酷さと、ホロコーストのような、いわば「洗練された」残酷さ、その中間にある、略奪者、侵略者としてのコサック兵たちの残酷さ。さまざまな暴力に晒されて、序盤では普通に会話していた主人公はだんだん話さなくなり、彼自身が暴力を振るうことを覚えていく。これを「人間性を失った」というべきか、「取り繕った文明のメッキが剥げて人間本来の姿になった」というべきか…。たぶん人間はどちらにもなれる存在で、どちらを選択するかは本人の選択に委ねられている。そして正しい道はたいてい大変な方なので、私たちは間違った方を選びがちorz

ラストで主人公は父親と再会し、自分の名前を取り戻す。とてつもなく重い話なんだけど、最後に少年が正しい道に戻れたところに希望を感じる。
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