しゅんまつもと

マリッジ・ストーリーのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.8
自分は誰かが恋に落ちる瞬間や二人の間に愛が生まれる瞬間を捉えた映画に弱い(とても好きという意)。その理由をこの映画に教えてもらった気がした。生まれた愛はいつか消えてしまったり、もしくは形を変えてしまう寿命付きのものだから、そんな儚さに惹かれてしまうのだと思う。

言わなくてもわかる、言わなくても伝わることは確かにあるだろう。でもそれはどうしたって"言わないまま"なのだ。それは少しずつ少しずつ紐を絡めて気づいた時にはもう目も当てられない。人の手を借りたってもっと複雑になるばかり。解き方だって最初から知っていたはずなのに。

離婚から始まる物語というとやはり坂元裕二の『最高の離婚』を思い出してしまう。惜しくも今年2019年にこの世を去った八千草薫さん演じる濱崎亜以子さんの台詞を引用したい。
「幸せになってくださいって言ったんでしょ。だったら、そうなれるような道まで連れてってあげなさい。その先があなたでも、あなたでなくても。」
そう。これだ。たとえ進む道が分かれたとしてもその先を歩くための靴紐をもう一度結んであげることは、きっとできる。

胸が痛くなるようなテーマでありながらシリアスになりきらない、ユーモアを忘れないのも劇映画として偉い。事実自分はナイフのシーンで爆笑してしまった。しかし、他の誰でもない自分がつけた傷口から溢れる血を必死に塞ごうとするのは物語の象徴のような気がした。

Netflix配信作品ではあるけど、ぜひ劇場で。