このレビューはネタバレを含みます
色々細かいところで逸話が散りばめられていて、北斎に対するリスペクトは感じられたんだけど何となく消化不良…?
80歳過ぎまで絵を描いて描いて描き続けてその間何度も名前を帰るほどの分岐点を持つ人の生涯を1本にまとめたらそりゃあ朝ドラの最終週みたいになるわなみたいになり…彼の生涯と観ると、どこか物足りなさを感じてしまう。
が、これは「北斎の“波”が出来上がる過程」の話として描いているって聞いて、ようやく
・富嶽三十六景の他の作品は旅する過程でそのようなシーンを入れるに留めて絵として登場したのは神奈川沖浪裏だけだった
・映画のラストを飾ったのが遺作と言われる富士越龍図ではなく波だった
・風景だけでなく沢山の絵を描いたにも関わらず風景画家として描かれていた
・北斎漫画など育成にも手を尽くしたであろう彼がお弟子さんとの関わりが少々希薄に感じた
・絵に関する見境のなさが口でしか語られなかった
あたりにも、そこそこ納得がいった。
CMの印象とだいぶ違う。
あのCMから受ける印象としては、
『こんな時だから描いた先に何か光を見いだせる』
なテーマかと思いきや、劇中ではそんなことは無い。
若い頃から死ぬまでずっと徳川の弾圧に振り回される現状は変わらなかった。絵で世の中は変えられなかった。変えられなかったから、せめて自分の好きな波を書いて終わったということなんだろうけども。
弾圧と戦うなら、同時代で面白おかしく検閲逃れの絵を描いた国芳とか出てくるのかなぁとか勝手に思っていたけど、そんなことは無かった。まあ史実であまり関わり無かったのかなあ。
こんな時だからだというのは『こんな時代だから』というのではなく『近しい人に不幸があったこんな時だから』という面が強かった。全体的に皆弾圧に淘汰されていく人の話であった。