イワシ

ロー・タイドのイワシのレビュー・感想・評価

ロー・タイド(2019年製作の映画)
4.1
射的の場面でアレックス・ニューステッターがジェイデン・マーテルに告げる「片目で狙え」のアドバイスが、終盤で反復されるが台詞一つなくショットのみで提示される。葉巻、金貨、ギプス、拳銃といった細部の提示=目撃によって余計な台詞/心理を刈り込み、タイトなサスペンスを生む。

アレックス・ニューステッターの過去の傷害事件を伝えるスナップ写真による演出は多少鼻につくところもあるが、これも『プライベート・ライラン』的な赤く染まる波として反復されるので満足。

感心したのは雨の演出。ギプスを覆う黒のビニールは勿論、ずぶ濡れのアレックス・ニューステッターがシャツを自然な動作で捲り上げるとそこに拳銃が見える。クロースアップされることもないこの拳銃の存在が、この若いボスの古典的なギャングを想起させる恐ろしさを演出する。そのために、一人くらいぶっ殺してほしかったという物足りなさも感じることになるが。

序盤で「盗みを働きました」の看板を肩に掛けてるジェームズ・パクストン(ビル・パクストンの息子!)の使い方も良かった。警察に連行されるキーアン・ジョンソンの目撃情報がチクリ屋のダニエル・ゾルガドリにどのように伝達されるか。あの場面の演出は見事。

遊園地でキーアン・ジョンソンがクリスティン・フロセスに追いつくまでのアクションは物語への貢献を超えた豊かな運動に溢れてて素晴らしい。いきなり疾走し、柵を連続で飛び越え、すっと横に並び、フレームインするリフトに全く同じタイミングで腰掛ける。せっつくような若さの運動!横移動から始まって、2回目の柵飛び越えでアクションつなぎでフルから腰から上を収めるミディアムサイズに変わり、到着したリフトに腰掛ける瞬間にカメラが僅かに下がる。
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