荒野の狼

独裁/スターリンの荒野の狼のレビュー・感想・評価

独裁/スターリン(1992年製作の映画)
3.0
「Stalin」の邦題は『独裁/スターリン』あるいは『スターリン/粛清の裏側』で、HBO  1992年製作の180分のテレビ映画である。ソ連指導者ヨシフ・スターリンを描いた伝記映画であり、ロバート・デュヴァルがスターリンを演じゴールデングローブ賞は3部門を受賞した。
DVDでは、会話は全て英語であるが、英語字幕やClosed captionが一切ないのが欠点。聞き取りやすい英語ではないのだが、本作は歴史上著名な人物が次から次へ登場しては、スターリンに粛清(殺害)されていくという内容なので、英語がほとんど聞き取れなくてもあまり苦にならない作品。本作の見方としては、主要人物が登場したら、多くはソックリさんなので、歴史上の実像と比較、殺害の状況が史実とあっているかなどをネットなどで調べながら見るのがお勧め。
大粛清の犠牲になった主な政治家は網羅されているが、殺害された人物がどういう政治家・人物であったかについてはほとんどに描かれていない。また、スターリン自身は登場シーンは一番多いが、内面が描かれているとはいい難い。デュヴァルは前半はスターリンのお面を被っているような厚化粧でいただけないが、後半は本人ソックリのメイク。
人物像がよく描かれているのはスターリンの二番目の妻ナジェージダ・アリルーエワ(演ジュリア・オーモンド)だけで、彼女が前半の主人公といってもよい。映画はスターリンが彼女と1919年に結婚した前後からスターリンの死までを描き、最初はレーニン(マクシミリアン・シェルがそっくりに変貌)も登場し十月革命の模様はエイゼンシュテインの映画「十月」からの映像が使用されている。
ヒトラーとの闘いは描かれるが、息子のヤーコフ・ジュガシヴィリが捕虜になる話が中心でヒトラーは本人の歴史映像でのみ登場。第二次世界大戦後のアメリカとのかけひきが描かれていないのはアメリカの作品だからであろう。ソ連の国民は餓死、戦死、粛清などで多大な犠牲がスターリンの時代に払われたが、本作では少しだけ触れられているに過ぎない。
トロツキーは失脚するまで少しだけ登場、カーメネフとジノヴィエフは最初スターリンと手を組みやがて処刑されるまで登場するが、この初期の3人は実物にソックリにメイクされている。
ブハーリンとオルジョニキーゼはスターリンの取り巻きの中では好人物に描かれており、前者はジェローン・クラッベが演じているが実物より美男子過ぎて似ていないが、スターリンと妻の漫画を描いたり、処刑される時にメモ「コーバよ、なぜ私の死が必要なのか?」を残したことなどは史実に沿っている。オルジョニキーゼは「セルゴ」の名で活動していたので本作でもセルゴと呼ばれているが、本作ではスターリンに自殺を迫られたことになっている。
セルゲイ・キーロフの暗殺もスターリンが黒幕と本作ではされており、スターリンの関りが疑われている事件は本作では全てスターリンがやったことになっているので、本作で死んでいく人物の本当の死因かどうかは歴史書などで確認する必要がある。
スターリンの粛清の直接の死刑執行人ともいうべき、ヤゴーダ、エジョフ、ベリヤの三人はいやらしく、冷酷で臆病者という実像通りの描かれ方で役者は風貌こそ本人たちに似ていないがはまり役。
後半は軍人のヴォロシーロフ、フルシチョフ、モロトフの3人が取り巻きとして登場しスターリンに対して怖れ、服従、反感をみせ、風貌は本人に似せてある。
本作の語り手はスターリンの娘スヴェトラーナ・アリルーエワで少女時代からスターリンの死まで登場している。
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