ひこくろ

温泉旅行記(霧島・黒川・嬉野)のひこくろのレビュー・感想・評価

4.0
私映画というものがあるならこういうのを言うんだろうなあと思った。
主人公の一人語りのモノローグに冒頭の八ミリらしい映像。この時点でグッと心を持っていかれる。
その後は、普通のカメラの映像に戻るのだが、モノローグの調子は変わらない。

妻と新婚旅行で訪れた温泉地の様子が、これでもかってぐらいに淡々と一人称で描かれる。
個人が持ったカメラで撮影という点では、YouTubeなどと同じなのに、そういう動画とは一線を画す。
ただ、自分の見ている風景や思いを描いているのではなく、あくまでもこれは作品なのだ。
そういう点では、映画の意味を考えさせられる映画でもあった。

24分という短さもちょうどいい。
もっと長ければ冗長になっただろうし、短ければ動画感が出てしまっただろう。
ここら辺にも「これは映画なんだ」という強い意志を感じる。

単に温泉を訪れているだけなのに、ただの案内ガイドになっていないのも面白い。
祖母の死、という背景をちゃんと組み込んでいるのも味わい深かった。
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