ちろる

ワンダーウォール 劇場版のちろるのレビュー・感想・評価

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)
3.7
現代の話でありながらまるで70年代にタイムスリップしたような不思議な不思議な空間。
あなたはあの、京都にある歴史的な学生寮を知っていますか?

京都大学の吉田寮の存在については何となく知っていたが、Now on time「吉田寮学生追い出し事件」については恥ずかしながら何も知らなかった私。
「大切なものを守りたい」
その一心で大きなエネルギーが生まれる、この大切な「もの」とは寮そのものではないのかもしれない。
この吉田寮(作品では近衛寮としている)に幾層にも積み重なった学生たちの思いが、現代につながっていく交信所のような役割があって、言葉にうまく言い表せないその場所に宿る魂のようなものを守ろうとしてたのだろう。

今現在も吉田寮の問題は苦しい状況であり、コロナ禍で裁判が先延ばしになっているとはいえ、むしろこのコロナ禍を理由に、大学側は一気に学生に追い討ちをかけていくのかもしれない。

力のない正義は無力
正義のない力は圧制

この、大学VS寮生の戦いはなんだか社会の縮図そのものだ。
叫んでも文句言っても権力は有無を言わさず押し切り、やがてウォールを建てて一切を遮断。
叫ぶ人々も、その権力の重さに疲れてしまったり、自分の都合からズレればひとり、またひとりと立ち去り、取り残された者たちもやがて戦意を消失していく。

壁にただひたすらき立ち向かう情熱だけを見せるのではなく、この作品はそういった人間の弱さとか感情の不安定さを実によく描いていて、ラストは茶室の「和敬静寂」とはね・・・

熱いシーンの中にたまにコミカルさもありとても観やすい!
成海璃子さんのお胸をあんな形で見せるとことか、あぁ、流石渡辺あやさんだなぁーと妙にニヤけて納得しちゃう脚本でした。
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