Jun潤

街の上でのJun潤のレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.1
2021.04.21

「愛がなんだ」「あの頃。」の今泉力哉監督作品ということで気にしていましたが、公開以降他の方の高評価なレビューを見るうちに俄然興味が出てきたので今回鑑賞です。

下北沢を舞台に、荒川青の破局と学生の自主映画製作を軸に展開されていく、様々な人の恋愛模様。

今泉力哉作品にそこまで惹かれてこなかった僕から見てもこれは傑作でしたね!
まさに「愛がなんだ」×「あの頃。」という感じで、一筋縄ではいかない恋愛観や恋愛群像劇が、懐古するような形で描写されていきました。

序盤から現実的かつ少し共感から遠いようにも感じる恋愛観が展開されていき、様々な人物が登場してきたかと思いきや、その人物たちの関わりが一つの形に収束されていくような構成にどんどん引き込まれていきました。
明確な描写はありませんでしたが、あの人とこの人は同一人物なのでは…?という妄想も広がりますね。

それ以外にも、噛み合わない会話から生まれ、思わず笑いがこぼれてしまう場面や、わかりやすく醜い人間というより、それは仕方がないなと思えても少しモヤっとする現実の描写も印象的でした。

役者さんたちの演技も相まってフィクションの世界の物語というより、現実の物語のように心にスッと入ってきました。
下北沢の街並についても、僕自身東京に住み始めたのは最近で、田舎育ちなので田園や山の方が自分の原風景としては近いのですが、それでも役者の演技や光の感じから長くそこで暮らしていたかのような錯覚に陥れましたね。
めちゃくちゃ共感性が高い!というわけではないですが、自分も作品世界の中にいるかのように錯覚させてくれる、そんな作品でした。

キャストの中で若葉竜也と古川琴音と萩原みのりは見知った顔でしたが、若葉竜也を最初に認識したのは「GANTZ」でしたが、まさか主演作を見ることができるとは当時思いもしませんでした。
古川琴音も、最近は話題のドラマにも出演して知名度が上がりつつあるかと思いますが、存在感は作品の世界に溶け込んでいるものの、その特徴的な声でもって存在感を放っていたと思います。
萩原みのりが演じた人物は今作で唯一と言っても良いほど小憎らしい役回りでしたが、一番現実っぽさを纏っていた人物だったと思います。

登場人物の中で好きになったのは、誰彼構わず自分の恋愛話を話してしまうお巡りさんと、青が働く古着屋さんに序盤に来た女の子ですね。
序盤のライブハウスに来ていた、青にタバコをもらおうとした女性を演じた方の涙の筋が美しすぎました。
Jun潤

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