Shin

街の上でのShinのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.7
 下北沢の古着屋で働いている青(若葉竜也)は、ある日恋人のユキ(穂志もえか)に別れを告げられるも、納得がいかない。

 そんな折、古着屋の客で美大生の町子(荻原みのり)から自主映画への出演をオファーされる。演技などしたことがない青は、馴染みの古本屋の店員である冬子(古川琴音)に手伝ってもらいながら、出演を試みる。

 全く役に立てなかった青であったが、現場で知り合ったスタッフのイハ(中田青渚)と仲良くなる。しかし、その帰り道、偶然にもユキと鉢合わせするのであった🤭

 冒頭で語られる映画の撮影において、カットされ、誰にも見られることなく埋もれたシーンへの回顧は、あたかも今泉監督自身の心情を表しているようだ。

 時間の経過とともに風化してしまう情景には、素敵なシーンがたくさん残っていて、それを留めてくれるものが映画だったり、マンガや写真だったりする。

 実際にロケ地になっている下北沢も再開発により、風情のある街並みは様変わりしつつある。駅の出口が分かりにくくなったし🤣

 そんな街の上で繰り広げられる男女の恋愛模様は、いつまでも見ていたいくらい微笑ましくて、時にシュールに笑わせてくれたりもする。まさに今泉監督の真骨頂だ。

 明日、下北沢に行けば、本当に登場人物たちと会えるのではないかと思えてしまう程、出てくるキャラクターが自然体だし。これは監督の演出の巧みさといえる。

 とはいえ、主人公の青を取り巻く女優たちも素晴らしかった。一瞬で視線を惹きつけ、それでいてどこにでもいるような佇まいを見せたりする。特に青と仲良くなるスタッフ役のイハには新鮮な驚きがあった。

 しかし、間髪入れず良作を作り続ける今泉監督の力量には本当に恐れ入る。




 
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