Shin

ブルーイマジンのShinのレビュー・感想・評価

ブルーイマジン(2024年製作の映画)
4.6

 監督自身の体験を元にした本作。主人公で俳優志望の乃愛(山口まゆ)がかつて映画監督から受けた性暴力によりトラウマに苦しんでいたが、友人と訪れたシェアハウス(ブルーイマジン)で出会った仲間たちと交流するうちに、自身のトラウマに向き合い、乗り越えていこうとするヒューマンドラマ。

 重いテーマを扱っていながらも直接の被害の描写は無く、あくまでも事後の話の展開に焦点を当てている。主人公が相談しようにも身内や新聞記者もまともに取り合ってくれないばかりか、2次被害も受けてしまう深刻さ。今でもトラウマがフラッシュバックしてしまう主人公の心情を繊細に描いている。しかし、男社会が悪いと勧善懲悪にするのではなく、バランスを取っているところも巧い。

 一番の山場である記者会見のシーンは胸が熱くなり、主人公たちが会場を出た時の画はそれはカッコよかった。監督はアフタートークで、記者会見のシーンをタランティーノの映画のように刀で斬りつける描写も考えたそうだが、そうしなくとも充分に怒りの熱量は伝わってくる。そして、ラストの温かい光に包まれている様子は希望をも感じさせてくれる。

 作品が素晴らしいことはもちろんのこと、松林監督の女性蔑視に立ち向かう覚悟と信念にとても感銘を受けた。この映画がもっとたくさんの人たちに広がることを願っている。
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