Shin

夜明けのすべてのShinのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.7
 原作が瀬尾まい子の小説で、監督が三宅唱という本作。

 PMS(月経前症候群)に悩まされる藤沢美紗(上白石萌音)と、パニック障害を患っている山添孝俊(松村北斗)の交流を描いた人間ドラマ。PMSで仕事を辞めざるを得ない程の状態になってしまうという事実を初めて知りました。

 同じ職場で出会った二人が、相手の症状を理解し助け合うことで、自分の気持ちも穏やかになっていく。心理描写が丁寧で、終始流れる音楽も相まって和やかな雰囲気に包まれる。

 職場の社長である栗田(光石研)や、山添の前職の上司(渋川清彦)のつらい過去を持つ人物の描き方も好感が持てました。人は皆何かしら悲しみを背負って生きている。

 またゼロから作り上げたという社内の空間の使い方も良かった。事務所の中2階のような様子が見えるつくりはコミニケーションの場として一役かっていた。

 原作では「栗田金属」だったのを「栗田科学」に変更して、終盤でプラネタリウムを登場させ「夜明け」というテーマと合致させたことが、作品により深みをもたらしていたように思う。

 人生はつらいことの方が多いが、仲間と繋がり、助け合い、自分が人の役に立っていると実感することが幸せにつながる。このことを改めて思い出させてくれる素晴らしい映画でした。

 
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