脚本の巧妙さは言わずもがななので言うまでもないが、その他に特筆すべきなのは、しっかりと客観性があるということ。
例えば、古着屋の店番で文庫本を読んだり、大真面目に飲みの席で熱い仕事談義を交わしたり、「城定秀夫監督の城定です」と行ってみたり、側からみたら気恥ずかしすぎる彼らの言動や行動を、下北沢という街が何にもなれていない人々へのある種の許しを与える光景に思える。
絶対につまらないであろう自主制作の映画(タイトルがSleep in Readingという絶妙な恥ずかしさも秀逸)の披露上映回に来た人々が監督に向ける、愛想だけの賞賛というSっ気のあるリアリティも素晴らしい。
何にもなれない人を、何にもなれなくても許してしまう残酷な街でもあるという側面も一貫して表現するシビアさも兼ね備える。