一人旅

オン・ザ・ロックの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ソフィア・コッポラ監督作。

『ヴァージン・スーサイズ』(99)、『SOMEWHERE』(10)、『ブリングリング』(13)と作家性の強い作品をコンスタントに発表しているフランシス・フォード・コッポラの娘:ソフィア・コッポラの監督&脚本最新作で、『ロスト・イン・トランスレーション』(03)にも出演したハリウッド屈指の脱力派俳優ことビル・マーレイが生粋のプレイボーイパパを味わい深く演じています。

NY+αを舞台に、仕事に忙しい夫の浮気を疑った作家の妻:ローラが、希代のプレイボーイである父親:フェリックスにそのことを相談したところ、二人で一緒に夫の尾行をすることになり―という夫の浮気疑惑を発端とした父娘の奔走&交流を描いたユーモラスな味付けの人間ドラマであります。

プレイボーイである父親に捨てられた記憶を忘れられないまま大人になって家庭を築いたヒロインが、今度は愛する夫の浮気疑惑に直面するという内容で、子どもの時に自分を捨てた当事者である父親との二人三脚の浮気調査を通じて、長年わだかまりのあった父娘の関係に少しずつ変化が訪れていきます。夫の浮気疑惑を巡る真相究明を当初の目的として話が進みますが、やがて父親と彼に裏切られた経験を持つ娘の父娘ドラマへと物語の焦点がシフトしていく作劇となっています。本作は、父親の過去の行動が原因で“誰からも愛されない”と心の奥底で感じながら生きてきたヒロインが、夫の浮気疑惑を発端に始まった父親との時間を通じて“父親の呪縛”から解放され、自らの幸せと生き方を本当の意味で掴み取っていくまでの過程を見つめたユーモラスでちょっぴりビターな“父娘+再生ドラマ”の佳作であります。

悩める真面目なヒロインを演じたラシダ・ジョーンズの好演は勿論のこと、彼女と行動を共にする女たらしの父親を演じたビル・マーレイの妙演が素晴らしいですし、日中~夕暮~夜で見え方の異なるNYの街角ショットも様になっています。
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