ヒノモト

アフター・ヤンのヒノモトのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.5
「コロンバス」のコゴナダ監督の最新作にして、A24配給作品。

感想を言語化しにくい、ある意味難しい映画でした。
それは、今作が明解な答えを出す映画ではなく、事象や記録を積み重ねることで派生していく、家族の時間の切り抜きに過ぎないからで、継続継承していく家族、人間の歴史の一瞬の出来事には終わりはないのと一緒で、続いていく物語なんだと気づかされ、そこに観客としての言葉として、どういう感想を紡げばいいのかに悩みます。

物語はテクノと呼ばれる人型ロボットが現在のスマートフォンレベルに家庭に普及した未来世界にて、ある家族で利用しているロボットのヤンが突然動かなくなり、修理を頼むが、その過程で、ヤンの体内に備わった動画撮影機能によって記録された映像を再生すると見知らぬ女性が映っている‥というお話。

物語構造はシンプルですが、展開や台詞に押しつけがなく、ロボットのヤンを失ったことから見える家族のつながりの希薄さや、ヤンの記録から見えてくる人間というものへの憧れのような感情、そして終盤にあるヤンのルーツとアジア人への思いとそこから継承していくものが積み重なって、1つの映画になっているということを体感してみたものの、まだ咀嚼しきれないところもあり、複雑な思いにもなります。

あと特筆すべきは、ヤンの記録の中に岩井俊二監督作「リリイ・シュシュのすべて」の楽曲「グライド」がカバーされて、エンドロールも含めて効果的に使われていることも、日本人的にはより熱い要素になっています。

今作の思いをすべて咀嚼できたとは思わないですが、SF的設定以上に、家族や人間のあり方について問いを投げかけるような物語になっていて、神秘的な作品だったと思います。

以下ブログは同内容ですが、本編の印象的なシーンの写真も掲載しています。
https://ameblo.jp/hinomoto-hertz/entry-12770557069.html
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