ピロシキ

アフター・ヤンのピロシキのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.0
ポスターに写る4人の目線。母は父へ、父は娘へ、娘はヤンへ、そしてヤンは遥か遠くへーーーそれぞれの目線にはすべて、愛情がこもっている。たとえかたちは違っても、たとえその対象が人間ではなかったとしても、、

ロボットが主人公の映画はいくつか見たことがある。それらはもっぱら、人間を理解したい、人間になりたいと願うロボットの話だったと記憶している。『アフター・ヤン』はその真逆で、人間たちがロボットについて理解しようとする物語。この家族はロボットを異形のものと決めつけず、愛情をもって受け入れようとする。そしてその愛のある目線を最も強くロボットへと注ぐのは、幼い娘である。先日観た『セイント・フランシス』もそうだったけど、大人がいちいち気にするつまらない先入観を子どもが無視してどんどん歩み寄っていくさまは、爽快であり尊い。

『アフター・ヤン』は、もはや本編そのものが後日談なのかもしれない。この家族にとってはヤンと過ごした日々こそが、忘れがたい「メモラブル」な時間だったからである。ならば、あのオープニングの白熱ダンスバトルは、まさにその「メモラブル」な日々のクライマックスとよぶにふさわしい。この後大きな喪失と向き合うことになる家族の連帯が強烈に示される、素晴らしいオープニングだった。
ピロシキ

ピロシキ