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アフター・ヤンのtjrのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
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スパイク・ジョーンズ「her 世界にひとつの彼女」を彷彿とさせる世界観。
美しい映像、ロケーション、プロップ、レンズフレア、音楽。それらに負けずしかしとても繊細な演技。
斬新な設定の近未来SF、しかし言葉ではなく映像で語る。
とにかく好きな要素が多すぎて、なぜもっと早く観なかったのか後悔している。

小津安二郎を敬愛するコゴナダ監督らしく、住居を使ったフレーム内フレームや真正面からのクロスカットなど几帳面なほどの画作りは感嘆のため息が出るほど美しい。
しかしただの模倣ではない。例えば真正面クロスカットは、ビデオ通話のシーンで使えばその距離は相対しているのと変わらない。精巧な人型ロボットが登場するような未来だからこそ、コミュニケーションの距離感が現代と異なることを示す素晴らしいオマージュになっている。

そしてただ美しいだけでなく、人間の何でもない日常の美しさと素晴らしさを打ち出しているのも素晴らしい。
ヤンのあまりにも美しい記憶の断片が、どれも日常の一瞬の切り取りであるというのは言い表せないほどの幸福感だった。
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