回想シーンでご飯3杯いける

2人のローマ教皇の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
4.0
興行成績を視野に入れて映画を作る場合、いかに観客の共感を得るかが大事だと考えるのが現在の映画業界。だから最近は、世代別人口の多いアラフィフや、一般サラリーマンやOLをターゲットにした映画ばかりだ。その点で言えば、本作の主演2人はローマ教皇、つまり、彼らと同じ職業の人間はこの世界にいない。多めに見積もって、彼らをサポートする枢機卿(現ローマ教皇フランシスコが以前務めていたポスト)を同業者(?)と捉えたとして、それでも世界に100人しかいない。

ここまで共感ビジネスを度外視した映画を作れるのがNetflixの凄いところだろう。昨年に続いて今年も11~12月に力作を多数投入して、僕のタイムライン上でも新規加入者が増えている。

さてさて、本作は前教皇であるベネディクト16世と現教皇であるフランシスコの対話を、名優アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライス主演により描いた作品だ。究極の実話映画と言えなくも無いが、教皇の交代に際して実物の2人が会ったという事実は無いらしく、本作では、前教皇と現教皇を保守派と革新派の象徴として配置し、カトリック教会における歴史的転換を、コミカルな会話劇として仕上げている。いやー、それにしても教皇を「コミカルに」というのが何とも凄い。

ある程度、カトリック教会の知識を有している方が楽しめるが、サッカーからアバの話題まで飛び出してくる脚本はとても分かりやすく、例えば日本やアメリカでも取り沙汰される機会が多くなっている右派・左派の対立や、それに向けた解決のヒントを導き出す映画として、とても良く出来でいると思う。それから大半がバチカン宮殿でのロケで、その美しさを見るだけでも価値があるのではないだろうか。教会批判の側面を持つ作品なのに、良くまあ撮影許可が下りたものだと思う。