ろく

犯す女〜愚者の群れ〜のろくのレビュー・感想・評価

犯す女〜愚者の群れ〜(2019年製作の映画)
4.2
再生の物語だ。

城定の映画はよく走る。そしてその走ることに目が釘付けになる。これもそうだ。走ることでいままでの「澱」を全部浄化させるような感じなのよ。

不倫相手の夫と愛人を殺した女性(浜崎真緒)、そしてその女性を自動車で轢いてしまった男(守屋文雄)。この二人の「愛」なのよ。

そして守屋の「鬱屈」は彼女によって徐々に溶けていく。生きる希望が、生きる喜びが守屋には生まれる。工場で毎日ただ黙々と仕事をし、部下には蔑まされ(というかたまに殴られる)まさに「何もない」守屋に対し、彼女は現れる。そうよ、彼女は人殺しだとか犯罪者だとかはどうでもいいの。大事なのは「大切かどうか」なんだよ。

そういえば僕らは「周り」のことを気にするじゃない。流石にそれは犯罪だろとか、いくらなんでもそこまでするとかね。でもね、そんなのはどうでもいいんだよ。その目の前の相手が大切かどうか。彼女を守るためならみんな敵に回してもいい。何もなくてもいい。大事なのは「目の前にある」ものだけじゃないのか。

そう、犯罪ネタなのにこの映画は思いっ切りのラブストーリー。でもね、最後は破局が待っているの。それはとても悲しくてつらい(はずだ)。ただこの映画はそこからが凄い。破局は全てマイナスに向かうはずなのに破局が最後プラスになってしまうのよ。哀しくも辛くもないんだよ。なにもかもいいじゃんそんなものって感じなの。その破壊力ね。最後のシークエンスで僕は度胆を抜かれた。結局、幸せか不幸せかなんか「周りはわからない」んだよ。周りなんかの情報なんか気にしないでいいじゃないか。

和田光沙、守屋文雄とおなじみの城定オールスターズ(吉岡睦夫もいればよかったのに)。浜崎もAVの人だけどしっかり演技できてグッドです。というか最後近くなんか浜崎がなんともかわいらしい。

ここのところの城定はもう油のっている感じなの。しっかり「映画」しているし。映画ってのは見たとき「何だかわからないけど揺さぶられるもの」(黒沢明)なんだよ。
ろく

ろく