SPNminaco

恐竜が教えてくれたことのSPNminacoのレビュー・感想・評価

恐竜が教えてくれたこと(2019年製作の映画)
-
家族とバカンスに訪れた島で少年サムが出会った少女、テスとはティラノザウルスのことだろうか。但し、邦題ほど恐竜が出てくる話じゃない。最後に残った恐竜の気持ちを考え、一人ぼっちに備えた訓練に勤しむサムはどことなく『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』を思い出すけど、そう悲しい背景がある訳じゃない。マイペースでサムを巻き込んでいくテスはちょっぴり不思議な子だけど、パパの存在を知りその前で戸惑いながら追いかける健気な子。そんな2人の大切な夏の思い出作り。
ビーチ、屋台、ゲーム、ピクニック、ダンス、亀、カニ。あくまで子供視点で大人はそれを邪魔しない、悪い人は出てこない、児童小説のような「夏休みこども映画」だ。お兄ちゃんや大人同士にあった出来事はアッサリ省略し、11〜12歳という微妙なお年頃で「わかる」ことしか描かない潔さ。サムのママが偏頭痛だったり何故か骨折したり痛い怪我するのは何か不幸の前触れかと思ったけど、単に診療所に行かせるための都合かな。
いつか一人残される恐怖、潮が満ちる海に取り残される恐怖。末っ子だからこそ思い巡らし、「もし」を自然と自分に置き換えるサムの豊かな感受性。カメラは小さくても大きな悩みを俯瞰して捉え、家族バラバラに過ごすことになるバカンスはみんなで集まって終わる。家族が側にいてもいなくても一人ぼっちじゃない。たぶん島のように、みんな点と点で繋がってる。
陽気なサルサ音楽が流れて、とても風通しの良い映画だった。風が強く波のないビーチ、どこまでも広がる平坦な風景を自転車でのびのび疾走するのがオランダらしい。あのビーチにいつテオ・ヤンセンの“ストランドビースト”が歩いてきてもおかしくない!
SPNminaco

SPNminaco