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i-新聞記者ドキュメント-のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

5.0
映画「新聞記者」の原案者としても話題を集めた東京新聞社会部記者・望月衣塑子を追った社会派ドキュメンタリー。オウム真理教を題材にした「A」「A2」、佐村河内守を題材にした「FAKE」などを手がけた森達也監督が、新聞記者としての取材活動を展開する望月の姿を通して、日本の報道の問題点、日本の社会全体が抱えている同調圧力や忖度の実態に肉迫していく。2019年・第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品され、同部門の作品賞を受賞した。
蔓延するフェイクニュースやメディアの自主規制。民主主義を踏みにじる様な官邸の横暴、忖度に走る官僚たち、そしてそれを平然と見過ごす一部を除く報道メディア。 そんな中、既存メディアからは異端視されながらもさまざまな圧力にも屈せず、官邸記者会見で鋭い質問を投げかける東京新聞社会部記者・望月衣塑子。果たして彼女は特別なのか? この国の民主主義は本当に形だけでいいのか、メディアはどう立ち向かうべきなのか?菅官房長官や前川喜平、籠池夫妻など、ここ数年でよくメディアに登場した渦中の人間が続々と登場し、これまでの報道では観られなかった素顔をも映し出す。
報道では決して映し出されない、現代日本の真の姿。 日本の報道の問題点、ジャーナリズムの地盤沈下、ひいては日本社会が抱える同調圧力や忖度の正体に迫る社会派ドキュメンタリー。
辺野古基地埋め立て用の土を望月衣塑子記者が現地の基地埋め立て反対派住民と現地視察し沖縄防衛局のヒアリングに参加するなどして調べたところ、事前の取り決めでは赤土は10%としていたのに、実際には10%以上になっていた。
辺野古基地埋め立て反対派住民のリストを、官邸が沖縄防衛局に依頼して作成していたことを毎日新聞が報じた。望月記者は、官邸記者会見で菅官房長官にこれらの疑惑を問い質したが、菅官房長官はまともに答えなかった。
安倍政権に大半を参加者が占める日本会議について、籠池夫妻は「日本の伝統と歴史を守る新保守から、安倍政権と関わるようになってから日本会議は変節した」とインタビューの中で発言していた。
望月衣塑子記者は、東京新聞社会部の中でも政権との関係を壊したくない政治部記者と社会部のデスクも空気を読まずケンカする遊軍的な記者であり、歯に着せない真実を追求する姿勢は日本よりむしろ海外の特派員に支持者が多い。
海外の特派員からすると、記者クラブに所属していないと官邸記者会見に参加させてもらえず、質問は事前通告する義務がある記者クラブのシステムは異常で、「真実を追求する」というジャーナリズムの役割は日本では後退していると思われている。
官邸記者会見で、菅官房長官に対する望月衣塑子記者の粘り強い質問の切っ先を鈍らせるために、官邸は東京新聞に「質問は2問まで」「疑惑があっても疑問を問うてはならず、事実に基づく質問のみを許す」と質問制限を加えてきた。
これはマスコミを、疑問や疑惑を憶測や決めつけとし、疑惑や疑問について問い質して事実関係を確かめることも出来ない、ただ官邸が流す情報を右から左へ流す広報にし、ジャーナリズムの役割を放棄することに繋がる。
だが東京新聞は、官邸に質問制限について、なかなか抗議せずに、及び腰だった。市民団体の抗議などに背中を押されて、ようやく東京新聞は官邸に質問制限について抗議した。
この映画は、安倍政権の疑惑を追求するのではなく、日本のジャーナリズムの危機について、取材対象と信頼関係を築き同調圧力に負けず空気を読まない「自分が疑問に思うことを追求する」自分であり続ける望月衣塑子記者という稀有なひとりのジャーナリストの信念と人間性について、「自分の頭で考え真実を追求することでしか自分であれない」ということのドキュメンタリー映画。
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