WOWOWでの『ドクター・スリープ』初放送に併せて、北米公開版(144分)も放送されたので鑑賞。
『ドクター・スリープ』を観た後だと、何故かこのキューブリック版が恋しくなってしまう。確かに原作のもつ家族愛という大きな部分を削ぎ落としてしまったことで、一体何に襲われているのか意味不明な内容になってはいる。寝室の二人などについては、全く説明がない。
しかし敢えて詳細に写さないことで生まれる不気味さ、そして空間演出など芸術性がかなり優れている。驚かせるという現代ホラーにありがちな演出は一切排除され、ただならぬ雰囲気だけでビビらせてくるのはキューブリックの演出力の賜物だろう。
加えて、ジャック・ニコルソンのキャリア史上最狂といえる演技も相まって本作の異様さが倍増している。ただ、本作で１番物凄いのはシェリー・デュヴァルの追い込まれ演技だろう。撮影時、キューブリックから苛められていたストレスが、まさかこのような形で結束するとは本人も予想だにしなかったかもしれない。結果として、彼女のニコルソンに引けを取らない演技力が作品の魅力の1つになっているといえる。
キング自身は本作を現在に至るまで批判し続けているが、映画史に残るホラーの代表作であることは間違いない。
