ごんす

ユンヒへのごんすのレビュー・感想・評価

ユンヒへ(2019年製作の映画)
4.5
話自体は人が人を思い出してその人のことを考えるという至ってシンプルなもの。
クィアな感性を扱った映画でも若かりし日の回想やドラマティックな恋愛の描写は無くあくまでも現在の視点で語られることが中心の物語はあまり観たことがなかった。

彼女達がどのように生きてきたかは簡単な台詞や手紙で少し語られる程度で極力無駄が削ぎ落とされている印象のある脚本だが、確かにこの人達はいると思わされる役者陣の演技は見事。
ちゃんと寒そうな時に鼻が赤くなっていたりするだけでもいちいち信用できる。
(この辺は全速力で走ってきたのに汗一つかいてない、化粧もバッチリなどの愛すべきトンデモ邦画達も見習うべき所でありますぞ)

ドラマを起こす為に悪人を登場させたり男を過剰に悪く描かなくても抑圧されて生きてきたことは伝わるし、フェミニズム映画としても芯の強さを感じる。

映画内で交わされるハグがとても印象的でジュンと叔母さんのハグ、ユンヒの娘とその彼氏のハグする所やその際にぽつりと発する言葉などが物語全体、ユンヒとジュンの二人を包み込んでいる様な気がした。

瀧内公美が演じていた女性が「今まで隠してきたことがあるならこれからも隠した方が良い」と言われるシーンに象徴される様に所々で歴史背景を感じる。

物語的には気になる所を観せないことで享受するものが多く、主人公達の手紙のようにこの映画も心にしまっておきたく思える。
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