Kuuta

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのKuutaのレビュー・感想・評価

4.0
タイトル通りの暗中模索。トムの無限の欲望が筋になる。AIに書けない脚本があるのだと、自らアクションで証明しようとする企画に見える。楽しかったー

・デパルマは正しかった
テレビから映画に移行した1作目は、飛行機で映画を見始めるとミッションが始まる=「映画になりきる」作品だった。「トップガン マーヴェリック」に続くトムの「映画文化を残すドキュメンタリー」路線が、ここに来てデパルマの指向と合致した事に何とも言えぬ嬉しさがある。キトリッジ再登場はそういう意図もあるのではないか。

劇場の暗闇=影の中に生き、影に消える運命にある映画業界に加わった若者を、トムは歓迎する。レッドオクトーバーを追え!からのアラビアのロレンス。ファーストショットから反転。時間を巻き戻し、アナログな記録を残す最後の試み。無意味な右往左往が面白く、デジタルとアナログの融合が面白い、という空港のオチ。

セルフプロデュースだから命を賭けて面白さを追求できる反則技。全てを先取りして支配するエンティティは、観客を楽しませ、見せ場を詰め込もうとするトムの欲望の映し鏡であり(顔を偽るIMFの手法を逆に利用される)、どこまで行っても自作自演の作品に見える。空っぽの話なのに「映画ではある」。「北北西に進路を取れ!」のような映画だった。

・空港からクロスカッティング連発。スパイ映画=サスペンス+アクションを編集が繋いでいる。このシリーズ、基本的にトムにサスペンスをやる意欲が感じられず、アクションにほぼ全振り。サスペンスを周りのキャラが担いつつ、両者が同時進行するので休む暇がない。サスペンスの緊張感をぶち壊しにする列車突入が素晴らしい。マーヴェリックでもそうだったが、映画スターの虚構性、三枚目な感じを自覚しているトムでなければ、あのバカみたいなクライマックスは成立し得ない。

・得意の映り込み芸。陰でぼやけている空港のトム走り、ジャンプ台はここですよ〜

・カーチェイスにバリエーションを持たせる手錠。きっちりキートンをやりつつ、縦方向に変わる列車の畳み掛け。揚げ物の油の滑る、燃えるの二段活用に感動。
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