Melko

コリーニ事件のMelkoのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
3.7
「時は昔には戻せない」

「俺には子供も家族もいない。欲しいのは、正義だ」

「君は遅く生まれた恩恵を被ってる。この国が当時どうだったか、想像できるのか?」

「これが法治国家だと言えますか?」

うーん、難しい映画だった〜。
内容でなくて、感情的に。

仕事で疲れてた日に見るもんじゃなかったかも、すごく重かった…
小説が元のフィクションだが、実在する法律「ドレーアー法」が肝になっている法廷劇なので、説得力が桁違い。
そして、黙秘を貫く被疑者、イタリア人コリーニの現在と過去の悲壮感が凄まじい。

新米弁護士カスパー・ライネン。ドイツとトルコのハーフで、彼が幼い時に蒸発したドイツ人の父とは疎遠。
初めての仕事に力が入る彼だが、弁護をする相手の殺人犯コリーニは、一貫して黙秘を貫く。素性も動機も分からない。
おまけになんと殺された相手は、カスパーが父と慕う恩人だった…

なぜ、コリーニはカスパーの恩人を殺したのか。

巧みな策略と法の抜け穴によって歴史の闇に葬られる、辛く悲しい歴史。

カスパー自身の境遇や過去も物語に絡んではくるけど、なにせ物語後半のインパクトが強すぎて、カスパーがトルコ系であることや、弁護士なりたてという設定等は必要なのか?と、ちょっとノイズに感じてしまった。それがなくても成立した気はするし。

ただ、聖人君子のように思われて来た恩人ハンス・マイヤーの衝撃の過去と行い、その血を生意気な孫2人は受け継いでる様にサラッと描いてたのは巧いなと思った。
「祖父がいなければ、あんたなんかケバブ屋の店員止まりよ!」なんて、あんたそれを言っちゃおしまいよ、お里が知れる。

カスパーが疎遠だった父親にやむなく助けを求めたりするのは、コリーニと彼の父親の姿に重なる。こんな未来もあったかもしれないんだよな。

何よりも、コリーニの少年時代を演じた子役の演技が凄かった。彼が泣き喚くところで私も泣いた。あれが自分だったら…と思うと、「辛すぎる」なんて言葉は甘いぐらいかも。
遅く生まれた時代の恩恵を受けてる、か。。たしかにね。そうかも。
人殺しはいけない。許されない違法行為
………だけど……
例え自分の人生を犠牲にしてでも殺したい、生かしておくことはできない、許せない
そんな思いを抱かせてしまった悲劇
命令に従っただけなのか?楽しんではいなかったか?
難しい

仕事を全うせざるを得ない身だったのに、それも罪なのか?

法とは何なのか
真摯に向き合って欲しい

カスパーと教授のラストバトルは、ズッシリ重く、そして晴れ晴れ
だから、コリーニの決断も私は分からなくはないんだ…絶対ダメなんだけど、きっと、もう未練がないんだ。。みんなが待っているから…

また一つ、勉強になりました
法律は、正しくあろうとする人にとって優しいものであってほしい
人は変わりゆくもの
「当時反対できなかったのなら、いまやってください」
Melko

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