このレビューはネタバレを含みます
優しく厳しい事業家ハンス・マイヤー。
ハンスを父がわりに支援を受け、トルコ人としては異例な弁護士への第一歩を踏み出したカスパー・ライネン。
学びを共にしていたハンスの孫、フィリップの交通事故死により、別の道を行くことになった、フィリップの姉、愛していたヨハンナとの再会は養父の死であった。
被害者を知らず引き受けた、加害者の弁護。
養父を殺したファブリツィオ・コリーニ。殺害の理由は何か。
口重く、何も語らないコリーニ。
その陰には、法に対する猜疑心があった。
彼の人生は法によって捻じ曲げられた。
求めるのは「正義」。
コリーニの求める正義とは。
自ら制裁を課した理由とは。
そして法で正された時、彼が手に入れたものは。
きっと、安寧だったのではないだろうか。
時代とともに起こる法の正しさとは。
法とは不可侵なものなのか。法の正しさは。
法に従う弁護士として、ライネンが見出した答えとは。
罪に、悔いて良いことをし続けても、罪は消えないのだろうか。
悔いて変わりの誰かに慈善を施しても、やられた本人は忘れない。
どのような形であれ、直接決着をつけなければ、解決はしない。
そういうことなのだろうか。
戦争の正しさや正義は、良心を無視するものだと、それを問いかける作品を見ると思う。
しかし良心も、今を生きる環境によって左右されるもの。
世界の人々の良心の方向が、みな同じものになれば良いのにと、争いの止まないこの世界で思う。
自分の正義は相手の悪。でも相手の正義からこちらは悪。両視点の間にあるのは争いしかないのだろうか。