今泉監督作品は、よりシンプルになっていく感じがしている。『パンバス』もそうだけど、これも人物たちの心情のやり取りをよりスッキリ交通整理してきたという印象。
何かよくわからない駆け引きを観て、あれはああでこうでと考えてもいいんだけど、できればそのごちゃごちゃした部分は少なく方がこちらは助かります。その辺りに力の入れ具合がより上手くなっている。
中でも面白かったのは青木家とのよもやま話で、あれは完全に奥さんの妄想から始まったのに、それを擁護する夫と、客先なので失礼のないようにしたい夏目との善意の会話のはずが、すっかり毒々しいものに変わってしまう。こんなにカオスのくせに、あの変化はお見事な描き方。
花という、誰しもが喜ぶ確率が高いモチーフを、朴訥と誠実さだけで多くの女性を惹きつける夏目と絡めて、浮き足立たない脚本に仕上げている。彼はあくまで変わらない。騒ぐのは周りの女性たちだ。夏目は彼女たちの「言わないではいられない」告白にも振り回されず、淡々と生きるからこそモテている？ その辺りを男性目線で座談会とかしてもらって、聞きたくなりますね。
見終わったあと、無茶苦茶ラーメン食べたくなるので要注意（笑）
