荒野の狼

アルベール・カミュの荒野の狼のレビュー・感想・評価

アルベール・カミュ(2010年製作の映画)
3.0
「ペスト」「異邦人」などの小説で知られるノーベル賞作家、アルベールカミュの半生の映画。描かれているのは、妻や愛人との女性関係が映画の主要部分であり、カミュの家族・私生活についての情報は得られる。作家・思想家として活動に関しては、小説としては「転落」未完に終わった「最初の人間」についてと、思想としては反テロリズム・全体主義批判、サルトルとの論争などについて短く触れられている。カミュの思想を詳しく知りたいという人には、彼の著作である『シーシュポスの神話』や『反抗的人間』を読むことを勧めたい。カミュは優れた戯曲作品(「戒厳令」「正義の人びと」「悪霊」など)を残しているが、本作を見ると、舞台の演出もしていたことがわかり貴重(もっとも、本作においては舞台女優との恋愛関係を描く方に焦点がおかれていたが)。
自国フランスの民衆から支持されなくても、ヒューマニズム溢れる姿勢を貫いたロマンロランにも似た人格者のカミュを、本作では女性関係にだらしのない部分をもっとも強調してしまったのは残念である。ただ、あまり語られないカミュの側面を映像化したという点では一見の価値はある。
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