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キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱のakrutmのレビュー・感想・評価

2.5
小学生が読むような伝記(今の小学生は伝記など読むのだろうか)には必ず出てくるキュリー夫人の半生を描いた、マルジャン・サトラピ監督の伝記映画。

キュリー夫人に関する出来事が書かれた年表をそのまま順番に描いたような単調な映像は、正直言って面白くない。キュリー夫人に特に興味がない監督や女優が与えられた仕事をただこなしているだけに見える。キュリー夫人を演じたロザムンド・パイクの容姿がほとんど変わらないので、時間の経過がとてもわかりにくいのも難点。いきなり娘のイレーヌが大きくなっていたりする。キュリー夫人の科学的成果がほとんど描かれていないのもいけない。

でも、最も非難すべきは、当時の女性差別を誇張したいあまりに、史実を捻じ曲げている点であろう。映画では、ノーベル賞授賞式に出席したのは夫のピエールだけで、記念講演ではキュリー夫人(マリ・キュリー)の業績を自分のもののように話したなどと、キュリー夫人が夫に非難するシーンが描かれている。しかし、実際には夫婦そろってストックホルムに行き、ピエールの記念講演でもマリ・キュリーの業績であることをきちんと話しているなど、ピエールがマリを軽視することはなかった。誰もが知っているマリ・キュリーの伝記であるからこそきちんと事実を描くべきであるし、事実を捻じ曲げることはキュリー夫妻に対する冒涜でもある。

さらに、映画の途中で挿入される広島やチェルノブイリのシーンは、一体何を表現したいのだろうか。キュリー夫人のせいで原爆被害や原子力事故が起きたとでも言うのだろうか。あほか。原作であるローレン・レドニスのグラフィックノベルでは、キュリー夫妻の伝記だけではなく彼らの科学的成果がその後の社会にどういう影響を与えたかも描いているので広島やチェルノブイリが出てくるのだが、何の工夫もなくそれらを切り取って挿入しても意味はないだろう。

それにしても、クイーンズ・イングリッシュで会話するキュリー夫妻を見て、イギリスの人々は何とも思わないのだろうか。日本人が日本語で三国志を演じたら明らかにおかしいだろう…って、実際そういう映画があるんだ(笑)
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