【TIFFJP2019:業火は静かにやってくる】
オリヴァー・ラクセ監督はここ数年チラホラ名を耳にする監督だ。遂に東京国際映画祭で紹介される時がきました。ガリシア移民である監督はパリで生まれ。バルセロナに移り住み映画の勉強をし、子どもと映画を一緒に作る様子を撮った『Todos vós sodes capitáns』でカンヌ国際映画祭FIPRESCI賞を受賞、『Mimosas』でもカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞した。そんな監督の新作は山火事もの。
しかし、山火事からイメージされる激しいサバイバル劇はやってきません。Fireはなかなかwill comeしません。
放火の罪で逮捕された男が釈放される。彼は村八分状態で、村人からは忌避されている。それでも彼は慎ましく生きるのだ。川で立ち往生する牛を引っ張り、日々の家業に打ち込むのだ。そこへfireが静かにやってくるのです。
本作はまさしくコントロールできない山火事のように、男という起爆剤を置いてそのまま放置する。そして、業火が自然鎮火するまで、物語も放置プレイする。
そこから生まれる異質なドキュメンタリーの経路は『山の焚火』を思わせる滅多に観られない珍しさがあります。
オリヴァー・ラクセの今後に期待な珍作でした。