黒川幸則監督のデビュー作。居場所を失ったおっさんがひっそり抜くためにあるような惰性で量産されているポルノで終わらせてたまるか、俺は「映画」を撮っているんだ、というかかりすぎた意気込みは充分伝わってくるが、それが映画的であるかどうかと言われれば、まあ頑張っているけど、その頑張って映画に近づけようとしている姿勢がすでにダサいよねとしか言いようがないわけで、そのどこかオタク的な幼稚さ、内輪受けの映画ごっこではポルノに「映画」を刻むことなど到底できないのではないかと思った。

契約を取れない生保レディーが枕営業をかけた男を好きになってしまうが、同じく枕営業で契約を取ってきていた先輩に取られてあっさり恋から醒める。先輩は半ば無理やり犯されることで逆にその男を好きになってしまい、仕事そっちのけで入れ込んでしまう。主人公は学生時代の同級生に再会し、恋の悩みを聞いて彼と「契約」を交わす。燃え上がったセックスのあと、彼女は澄ました顔で生命保険の契約書を取り交わす。2人の男たちは呆然としている。仕事と割り切っても恋に溺れても行き違う男女の寓話。パペットを使った会話や振り付けのような動きで、登場人物が現実の街から少し浮いているようなイメージは『にわのすなば』にも感じる。