キャッチ30

アトランティスのキャッチ30のレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
4.0
 舞台はロシアとの戦争終結から1年後になる2025年のウクライナとある。ウクライナ戦争が行われている現在から少し遠い未来だ。
 残念ながら、平和な世界とは言い難い。戦争の傷跡が残っているからだ。廃墟と化した街に瓦礫の山、大地や水は汚染され、地雷や身元不明の兵士の遺体が数多く埋まっている。然も、どちらが勝利したかは明かされない。

 主人公はセルヒーという元兵士だ。セルヒーは戦争で家族を亡くし、PTSDに苦しんでいた。さらに、共に戦った唯一の友人イワンが自殺し、働いていた製鉄所も環境汚染の影響で閉鎖が決まる。行き場の無いセルヒーは水源が汚染された地域に水を運ぶトラック運転手となる。
 ある日、車の故障で立ち往生していたカティアと知り合う。彼女はブラック・チューリップというボランティア団体に所属し、兵士の遺体発掘、回収作業に従事していた。セルヒーはその活動に参加し、カティアと共に生きる意味を見出していく。

 監督のヴァレンチン・ヴァシャノヴィチは固定ショットで戦後のウクライナに生きる人々を撮る。荒野に並ぶ多くの墓は『ひまわり』を彷彿とさせる。冒頭と終盤のサーモグラィーによる映像はそれぞれ絶望と希望を暗示させる。