KnightsofOdessa

ディスコのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ディスコ(2019年製作の映画)
2.0
[ディスコダンスの必要性は不明] 40点

人の死なない『ミッドサマー』という前評判を聴いて駆けつけたが、発言者はアリ・アスター(と私)に土下座して謝って欲しいレベルで全く違う。似ているのは3つ目のキャンプの景色だけだし、そこだって『ミッドサマー』というより、私の人生最悪の映画『ウトヤ島、7月22日』を想起させる。その時点で地獄行き決定。ディスコダンスで多数の優勝経験を誇る少女の別の顔として、宗教者に囲まれた生活を描き、それを通して信仰を、そしてその裏返しでもある"神の不在"を描いた作品ということは理解できる。監督の言う通り、宗教者の誰もが自分の信仰すらフラフラな中で他者を自身の派閥に勧誘しなきゃならないせいで、なんでも悪魔のせいにするわ、他の派閥を蔑むわ、なんか言われたら暴力でねじ伏せるわ、と自己防衛のレパートリーだけには事欠かない。自己防御手段の不十分な子供がこの荒波に突撃し、無傷でいられるはずもなく、彼女が揉まれる荒波を共に体験するという、洗脳恐怖体験追随映画なのだ。

しかし、ディスコという要素が完全に浮いているのは些か問題ではないか。というのも、普通の映画なら少女が荒波に揉まれる過程でダンスという逃避手段を発見し、別の視点を得ることで荒波から逃れるという展開が多いものの、今回はダンス大会のスランプが原因で荒波に突入する羽目になるので、正直ダンスは入り口に過ぎない。別に映画としては間違ってないんだが、観客側が本作品を鑑賞する入り口もディスコなので、肩透かしを食らった気分にはなる。そして、モヤモヤは嫌な後味を残し続けてしまった。
→モヤモヤの正体が映画仲間の言葉によって判明した。ダンス、美女、タイトルで釣るという典型的な新興宗教のやり口だとのこと。これだー…(私が適当な未公開映画釣る時の手法を逆手に取られたからイライラしたのか)。

ただ、本作品を観て色々感想が浮かぶってのは幸せなんだとは思った。実際、私なんか中高の6年間で薄めのキリスト教に触れたわけだけども、そこまでにある程度の異文化に触れていたからこそ、その差異に気付けたわけで、子供の頃から一つのことしか知らない場合は、それが洗脳であるかすら分からないのではないか。そうなれば、我々部外者が洗脳された人間を一概に"不幸"とすることも出来ないのかもしれない。必要なのは選択肢であって、選択肢を得るには知識が必要だ。ということで、私は本作品をユースに持っていくべきだったように思う。確実にトラウマにはなると思うが、子供こそ"知ること"の重要性を知ってほしいなあ、と。

そもそも冒頭のダンスシーンは躍動感があったのに主人公の顔ばっかり写してるから、こりゃダメだと思ってしまった。叔父さんに会いに行くシーンは丸っと爆睡。しかも一番怖かったのは、一番後ろの通路側の席だったのに途中から通路におっさんが突っ立ってたこと。係員に注意されても微動だにしなかったし。立ち見禁止なのにモラル低いなーと思いつつ、映画なんか吹っ飛んでしまった。
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