ナガエ

ジャスト 6.5 闘いの証のナガエのレビュー・感想・評価

ジャスト 6.5 闘いの証(2019年製作の映画)
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内容に入ろうと思います。
薬物が蔓延するイラン。依存症者はホームレスとして街に溢れかえっている。薬物撲滅警察特別チームの一員であるサマドは、証拠らしい証拠はない中で無理やり捜査・捜索を行い、捕まえてきた容疑者を脅しにかけて、次々に密売人のトップへと辿り着こうとしている。トップの那覇、ナセル・ハグザド。誰もが彼から薬物を買っているのに、まったくその正体に辿り着けない大物だ。サマドらはようやくナセルの住居を捉え、確保することができたが…。
というような話です。

さて、昨日もイラン映画の「ウォーデン 消えた死刑囚」を見ましたが(この二作は同時公開みたいな感じだそうです)、今日見た「ジャスト6.5 闘いの証」も、昨日の「ウォーデン」とちょっと感想が似てるんだなぁ。

面白くないわけじゃないし、結構満足感もあるんだけど、どうにもこうにも物足りない。

で、それは、ストーリーの背景となる部分がちょっと薄いような気がするからだと思います。

大体こういう物語は、捜査官側のサマドだったり、追われるナセルだったりの、家族とか日常とかがもっと物語に絡んできて、それがストーリーを複層的にしていくんだと思うんだけど、どうもそういう感じがない。この物語が、「誰かを捕まえる→脅す→また誰かを捕まえる→脅す」という単調な繰り返しによってとりあえずナセルに辿り着く。確かに、たどり着いてからも色々展開はあるんだけど、でもそれも、「ナセルが獄中からなんとか出ようと画策する」とか「サマドのチームの捜査官と何やら揉めている」とか、あんまり深みを感じられない話でした。最後の方でようやく、ナセルとその家族の物語がちょっとだけ展開するんだけど、個人的には、この物語に登場するいろんな要素を考えれば、もっといろんな方向に物語を展開させられるような気がするんだけどなぁ、という気がしました。

昨日の「ウォーデン」でも思ったことだけど、この物語でも印象的な女性が一人登場する。そして、その女性が物語に大きく絡みそうな予感だけ抱かせたまま、全然絡んでこない。なんでなんだろうなぁ。あの女性を登場させるなら、もっとその方向の深堀りとか、あっても良さそうなものだけど。背景を掘り下げていくという意味でも割と重要な存在だし、ビジュアル的にも映えるし、何故彼女がさっさと退場してしまったのか謎だ。

いろんな人間関係が、散発的に沸き起こっては、割とすぐに消えてしまうので、何を軸に描きたかったのかイマイチよく分からなかった。サマドとナセルの関係性についても、ちょっと分かりにくいというか、二人の間のドラマみたいなものがあまりうまく見えてこない感じがしてしまいました。

映像の圧とかスピード感みたいなものは結構良かったし、サマドやナセルを始めとした役者さんたちがかなり濃い演技をしているので、不満足ではないのだけど、やっぱりちょっと、脚本にはもうちょっとどうにか出来る余地があるような気がしてしまいました。
ナガエ

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